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生きる LIVING

ビル・ナイのことを認知したのは、DVD をレンタルして観た映画『スティル・クレイジー』が最初だった。今となってはなんでレンタルしたのかも思い出せないが、架空のロックバンドについての映画というのに惹かれたのか。『スティル・クレイジー』は1998年公開の映画なので、その時点で彼は既に50絡みだったことになる。あれから20年以上経ったんだな。

黒澤明の『生きる』はワタシにとっても重要な映画だが、本作はカズオ・イシグロが意外なほど忠実に1950年代の英国に舞台を置き換えている。黒澤版の一種のホラー感も受け継いでいるが、黒澤明特有の主張を叩きつけるようなくどさはなく、あっさりとした出来になっている。それでもカズオ・イシグロらしさを感じるところがあり、『日の名残り』の原作を思い出すところもあった。

主人公が死んでからが実は長いというのが『生きる』を観た人が思うことだが、本作もそこからいきなり場面がそこに飛ぶのかというところで唸らされた。そして、主人公からの手紙で示される謙虚かつ現実的な認識は、本作の最後に少しの苦さと奥行きと落ち着いた余韻を与えている。

ビル・ナイ演じる主人公も、黒澤明の演出による目を剥いた志村喬の迫力はなく、またビル・ナイの歌の上手さが本作の場合痛し痒しの面もあるが、なによりビル・ナイにとって代表作となる主演作がようやくできたことが、彼が出ているだけで嬉しくなるワタシのような人間にとってなにより喜ばしい。

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