最近 diary.yuco.net で面白いエントリが続いているので遅きに失した感はあるが、『デジタル音楽の行方』の名前が挙がっているので紹介しておく。この続編といえる「Web2.0な世界で報道系組織が良心的かつ経済的に生きていく方法」とあわせて必読である。
さて、yuco さんが挙げている方策は以下の五つ。
- イベントで儲ける
- 広告で儲ける(アフィリエイトを含む)
- 薄く広く取る
- 寄付に頼る
- 最新記事は無料、過去ログデータベースは金を取る
思ったことをいくつか。
「イベントで儲ける」で引用されているクルーグマンの文章を読んで思い出したのは、白田秀彰さん一押しの『ビッグ・ピクチャー』である。といっても未読なため白田先生の受け売りなのだが、ハリウッドという場所が持つ幻想(例:スターに会える)がそこで働く人たちを惹きつけているという話で、技術者にとってそうした幻想を許容する場所として真っ先に思い浮かぶのはシリコンバレーだろう。yuco さんの文章の最後に出てくる「フカシ」の話もそうだが、魅力的な「磁場」が形成できるかどうかが鍵になる。
「ネットを舞台とした先導役競争が始まろうとしている」のでしょうな。
- 作者: エドワード・J.エプスタイン,Edward Jay Epstein,塩谷紘
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/01/01
- メディア: 単行本
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そして「薄く広く取る」で『デジタル音楽の行方』が引き合いに出されるのだが、本の中ではこの「薄く広く取る」やり方は「水のような音楽」モデルと紹介される。その方向性において、私的録画録音補償金問題も射程に入る。つまり、「薄く広く取って」資金プールを作るという意味では補償金制度も議論としてはアリなのである。iPod 課金という言葉で思考停止している人たちも多いようだけど。
ただ現状は安易に取れるとこから金巻き上げようと見えるところ、あと現在の JASRAC の評価、並びに配分の不明瞭の印象などを考えると、とてもじゃないけどそのまま受け入れられるわけはないのだけど。津田大介さんの「私的録音録画小委員会参加についていろいろ」を読むとそのあたりの難しさが伝わるが、補償金を諦めるかわりにユーザの権利をがっちがちに縛る DRM が義務化されてもダメなわけで。
『デジタル音楽の行方』に話を戻すと、訳者あとがきにも書いたが、(津田さんが解説で書いていることを別にすれば)ワタシがこの本を最も評価するのは、単に利用者の自由ばかりを訴えるだけでなく、件の資金プールの話や強制ライセンス化の話に代表される適切な行政の介入の話まで踏み込んで書いているところである。
- 作者: David Kusek,Gerd Leonhard,yomoyomo,津田大介
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2005/12/06
- メディア: 単行本
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そして最後に「寄付に頼る」だが、これは手軽に利用できるマイクロペイメントのシステムがないと現実的でないだろう。日本では PayPal が普及していないのが非常に痛い。