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ティム・オライリーが五つの分野について語る未来の展望

本日から仕事始めという人が多いだろうが、週末になれば三連休とまだいくらか余裕があるので、2010年を総括して2011年の方向性を定めるのに参考になる文章を読む時間はまだ残っている。

新年一発目の更新は、そうしたトレンドを読む文章として O'Reilly Radar に掲載されたオライリー・メディアの創始者、CEO であるティム・オライリーの What lies ahead インタビューシリーズを取り上げたい。

オライリーは5つの分野について今後の展望を語っている。ワタシが読んでおっと思った文章をざっと翻訳しておく。気になったら是非原文をあたっていただきたい。

What lies ahead: Data

やはり彼の一番の興味はこの「データ」にあるようで、来月開催されるカンファレンス Strata 2011 は注目である。

データとアルゴリズムこそが非常に多くの企業の活動の中核をなしており、それはこれから加速するだろう。

データ提携がこれからもっと多くなると思う。単体ではなしえなかったことでも、複数の企業が協業することで実現できることがある。Google 時代は、データにどれだけ価値があるか人々が分かってなかった時代だと思うわけ。多くのデータが手に取れるところにあった。それはもう通用しない。今では保護されているデータ源があるからだ。

大きなオープンデータ運動が起こるのも期待しているんだ。それは過去の政治的ないし宗教的な動機に基づくオープンデータ運動とは違う。GoogleFacebook の衝突は、宗教や政治が動機でないオープンデータを巡る戦いの一例だ。そこでの動機は実用性(utility)だ。

過去の予測エンジンはビジネスインテリジェンス、つまり人間の学習による解析や報告の上に構築された。新たな予測エンジンは反射神経になる。自律的なものだ。新しいエンジンは、Google がリアルタイムのオークションを運営しながら稼動し、どの広告が最もお金をもたらすかを理解するのだ。

スマートフォンがモバイルセンサープラットフォームになるという考えこそが、私の未来についての考えの完全に中心にある。そして思うに、それがみんなの考えの中心になるはずなんだ。電話や他のデバイスに入っているセンサーをどのように利用するか学ぶことこそが、ブレイクスルーが起こる領域の一つなんだから。

What lies ahead: Publishing

何といってもオライリーは出版社としての出自を持つわけで、出版の話題は欠かせない。やはり来月 O'Reilly Tools of Change for Publishing Conference 2011 が開催される。

ハードカバー、ペーパーバック、オーディオブック、それに多くの電子書籍は、同じ作品の別形態を表現しているに過ぎない。一方で新しいフォーマットは、著者のコンテンツ展開と読者のコンテンツ消費のあり方のより深い変化を表現している。グラフィックノベルは、日本で人気になったケータイ小説がそうであるように、西欧における最近のフォーマットのイノベーションだ。

形態の変化は、新たな種類の競合をもたらしたという意味でオライリーの出版事業に大きな影響をもたらしている。今うちの最大の売れ線チュートリアルの本だ。昔からあるリファレンスベースの本はウェブや検索に飲み込まれつつある。これこそが、我々が Safari Books Online を検索横断可能なコンテンツライブラリと定義しようとしている理由なんだ。今ではリファレンスものは検索できることが期待されている。そしてうちのチュートリアル本は、スクリーンキャストやオンラインビデオといった他の形態にますます追い込まれている。

キュレーションやアグリゲーションこそが出版の中核事業であり、未だにそれが必要とされていることは明らかだ。オンラインで手に入るコンテンツが多くなるほど、誰かがもみ殻から麦をふるい分ける切実なニーズがあるわけだ(もちろん Google もキュレーションビジネスをやってるけど、彼らはそれをアルゴリズムに従って行っている)。

本は人々に情報、娯楽、そして教育をもたらす。どうすればこれらの三つの要素がオンラインやモバイルを通じてうまく実現可能かということに出版社が注力すれば、イノベーションとビジネスモデルはその後についてくる。

What lies ahead: Net Neutrality

ネット中立性の問題は2011年の大きなトピックだろうが、この話題についてはティム・ウーの新刊の邦訳も待たれるところ。

「完全な」ネット中立性の考えは、ある時点で消え失せると思う。エリック・シュミットが、Web 2.0 Summit で重要な主張を行った。ネット中立性には二つの概念があるというものだ。一つは、いかなる特定企業、特定のアプリケーションも差別できないということ。しかし一方で、アプリケーションの種類を差別することはできる。動画を音声よりも低い優先度にしたり、大量データダウンロードをリアルタイム通信が必要なものよりも低い優先度にできるわけだ。優先順位付けは議論を呼ぶが、回線容量の制限を考えれば、それが必要なことは明らかだ。

What lies ahead: DIY and Make

日本でも Make: Tokyo Meeting は毎回盛況だが、今年はまた違った展開がある模様。今春出る『Make: Technology on Your Time』日本版 Vol.11 にはワタシも例によってちょっとだけ携わっているのでよろしく。

なんであれ人々が純粋に楽しみで何かを興じているムーブメントを目にしたら、そのムーブメントの中に隠れた深い技術トレンドが存在する。

Maker ムーブメントの次段階は、新しい種類のビジネスの出現を伴うだろう。Adafruit Industries, DIY Drones, MakerBot, Instructables, iFixit, Etsy やこの分野における他の企業がいずれも新しいビジネスモデルを引き出している。キット、ツール、パーツを売るところもあれば、発見やセールスのプラットフォームを提供するところもある。

What lies ahead: Gov 2.0

ワタシなどオバマが苦しい政権運営を強いられることでアメリカにおけるオープンガバメント、Gov 2.0 の動きに水が差されないか心配していたが、オライリーはこれがビジネスになると考えているわけで先を行ってるねぇと思った。果たして日本ではどうか。

オープンガバメントや透明性への初期の関心の集中は徐々に消えつつあり、人々は仕事にかかりつつある。Gov 2.0 スタートアップの創業者は、ビジネスモデル――広告や都市向けバックエンドサービスの提供など――を会得しつつあり、そのスタートアップの第一陣が資金提供を受けつつある。

リストにあった項目の多くが最初想像したようには実現していないから、オープンガバメントは失敗したと言うかもしれない。振り返ってみれば、オープンガバメントが単なる透明性や政府の政策決定への参加だけではなく、オープンデータを実用に落とし込むことが可能な多くの方法であることに気付くはずだ。

Web 1.0 時代の終わり頃、バナー広告やポップアップなどのあらゆるでしゃばりな広告形態がうまくいかないのでウェブは失敗だと主張する人たちがいた。その後 Google がより良いアイデアを携えてやってきたわけだ。似たことが Gov 2.0 にも起こると思うんだ。人々が「Gov 2.0」とラベル付けするものの多くは、実は「Gov 1.0」期の初期の兆候や努力なんだ。重要な変化がいずれ起こるし、それは政府機関が Wiki を立てたり Twitter を利用したりするのとは何の関係もないだろう。我々は徐々に予想もしなかった多くの成果を目の当たりにするだろう。

ティム・オライリーのビジョンに賛同する人も反発する人もいると思うが、2011年は前向きな話題を取り上げることができればと願う。そして、ワタシ自身も前向きに生きることができれば……

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