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ファミリー・ツリー

『サイドウェイ』が素晴らしかったので、映画館で観ると決めていたアレクサンダー・ペインの新作。

本作はジョージ・クルーニーの映画である。彼は、妻がボートの事故で昏睡状態に陥ったことで娘たちと向き合うことになる仕事人間の弁護士を演じているが、『マイレージ、マイライフ』とは違った形で中年男の哀しさを見事に演じていて、今年のアカデミー賞は彼が主演男優賞を取るべきだったと思うな(『アーティスト』観てないけど)。長女から妻の浮気を知らされ、サンダルだけつっかけて外に走り出す場面などよかった。

このようにジョージ・クルーニー演じる父親は妻のやがてくる死と彼女の浮気の事実を前に情けない姿を晒すが、同じ題材を日本でやったら娘たちとの関係などもっと寒々しくなるだろう。そのあたりを救っているアメリカの「ダディズ・ガール」文化については冷泉彰彦の文章が参考になる……けど、これはやっぱり主役がクルーニーだから成り立つんだよな(本作の主役がポール・ジアマッティだったらと想像すると……)。

長女のボーイフレンドについての描写などがそうだが、登場人物の描き方が一面的でなく、そのあたりさすがである。派手な展開があるわけでなし、切なくも温かいラストまでどこがいいと説明するのが難しいが観てよかったという満足感がある映画である。

ただ主人公が先祖の土地を売却することについて行う決断が、もちろんその決断自体は十分に理解できるものの、本作の原題である自分が「子孫(descendant)」という意識と本作における家族の問題がうまくつながってない気がした。

あと一つ書いておくと、本作を観てよく分かったのが、ワタシはハワイ音楽があまり好きではないということだ。

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