- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2017/04/28
- メディア: Blu-ray
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2016年に映画館で観る映画はこれが最後になるかも。
本作に関しては、ワタシは何より原作のファンであり、将棋界についても知識がある将棋の指し手なので、アラが目について点は辛くなる。以下はそうしたマニアの戯言とみなしてもらって構わない。
原作がまさに涙なしには読めない作品だったため、映画版もそうなるかと思ったが、まったく泣くことはなかった。が、だから悪いということにはならない。
まず何より村山聖を演じた松山ケンイチ、羽生善治を演じた東出昌大はいずれもよかった。松山ケンイチがうまいのは前から分かっていたし、彼の髪型含む肉体的な役柄への寄せ方もよくやっていたが、東出昌大の羽生善治もよかった。ある場面の受け答えがすさまじく羽生さんらしくて、あやうく劇場で一人爆笑しそうになったくらいだ。これは馬鹿にしているのではなく、一部で棒と言われる資質がよいほうに作用している。
そういえばエンドロールで筒井道隆の名前を見かけ、あれ? 彼どこで出てたんだろうと思ったら、一緒に観た人も同じことを疑問に思ったらしく、調べてみたら……まったく気づかなかったぞ。変わったな、おい。
原作は村山聖の一生を辿るものだが、本作はわずかな回想シーンをのぞけば最後の数年に絞られていて、それでは聖の青春でなく聖の晩年ではないかとなりそうだが、彼を聖人化することなく棋士らしい圭角と傲岸と強情さをちゃんと描いている。
本作を先に観た人にはぜひとも原作(asin:4041030080)を読んでほしい。本作でも良い味出していたリリー・フランキー演じる村山の師匠である森信雄が、大変な傑物であることがよく分かるだろう。
本編の終わりに、本作が原作を元にしたフィクションと明記されている。ワタシにはどれが実際と違うかいちいち分かるので、それが気にならなかったというと嘘になる。たとえば、村山と羽生の最後の対局は、実際には NHK 杯の決勝戦なのだが、テレビ対局を再現しようとするといろいろややこしい要素が出てくるので、本作のような改変はよいだろう。ただ、村山が羽生を誘い一緒に行くのは、村山が好きだった大阪の庶民的な定食屋であってほしかった、なんでここは原作と設定を変えてしまうんだろうと惜しく思うところがいくつかあった。
あと本作の場合、音楽も少し耳障りだった。