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ルールが分からなくても将棋を観て楽しみ語るということ

ワタシ自身は、インターネットのおかげで今が最も多く将棋を指している人間なので、周りにもっと指す人が増えてほしいし、そういえば一年前に「てめー、羽生さんにお会いしていながらどうして将棋指そうという気にならないんだよ。はてなの連中、信じられねぇよ! 将棋指せや、将棋!」と叩き割ったビール瓶片手に id:kiyohero さんに絡んだっけ。その節は大変失礼しました。

梅田望夫さんは新刊で「指さない将棋ファン」宣言を掲げているが、指さない将棋ファンとして棋士を語った人として、真っ先に坂口安吾が浮かぶ。彼が将棋について勝いた文章で有名なのは以下のあたりか。

安吾は特に升田幸三を高く評価しており、以下の文章など久しぶりに読み返して思わず安吾とハイタッチしたくなった(彼は半世紀前に死んでますが)。

 これは、悲しいほど、当りまえなことだ。三、四十年もたってみなさい。坂口安吾の「堕落論」なんて、なんのこったこんな当り前のこと言ってやがるにすぎないのか、こんなことは当然にきまってるじゃないか、バカ/\しい、そう言うにきまっている。そのあまりにも当然なことが、今までの日本に欠けていたのである。
 升田八段の将棋における新風がやっぱり原則は私と同じもので、たゞあまりにも当然な、勝負本来の原則にすぎないのである。然し、日本の各方面に於て、この敗戦によって、日本本来の欠点を知って、事物の当然な原則へ立直ったもの、つまり、ともかく、当然に新しい出発というものをはじめているのは、文学における私と、将棋における升田と、この二人しかおらぬ。

坂口安吾 坂口流の将棋観

安吾が偉いのは升田の弱点、彼の将棋がハッタリになるところもちゃんと書いているところだが、ともかく升田や木村義雄といった人たちのキャラの立ち方は現代の棋士と比べ物にならない。

もちろん現代のトップ棋士にそれを望むのはお門違いであり、一方で将棋を伝える側も安吾の時代とは違った心構えが必要になるだろう。

梅田望夫さんは「指せもするけど、あえて観る」将棋ファンなので、将棋を指せなかった安吾と比べるのはある意味失礼であるし、新刊は極めて現代的に羽生善治をはじめとする当代のトップ棋士を語っている本になっているだろう。

羽生世代を中心に現代将棋が高みに達する一方で、正直将棋界としては残念な、もっと率直に書けば将棋ファンとして腹立たしい話ばかりを耳にするのだが、梅田さんの新刊が、その光の部分を指し示し、将棋ファンを増やすことを期待する。

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

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