ここでも何度も取り上げている O'Reilly Media のコンテンツ戦略担当副社長マイク・ルキダスが、またしても AI について書いている。
今回のテーマは「AIと創造性」で、GPT-3 の公開がこの議論を再び活発にしたとルキダスは書く。面白いのは、AI と「創造性」や「芸術」の関係についての議論は、毎回我々はハードルを上げていること。AI が新しい何かを作り出すたびに、本当の「創造性」、「芸術」はこんなものじゃない、というように。
ルキダスは、AI が人間の創造性を模倣する例にはあまり興味がないと書く。もう既に人工知能はキーツみたいな詩、ベートーベンみたいなピアノソナタの新作を生み出せる。が、キーツの詩にしろベートーベンのピアノソナタは今あるもので十分なわけで、それは重要ではない。
本当に重要なのは、過去の芸術家風の新作ではなく、質的に新しいものを生み出せるか? ということだ。この文章の副題にあるように「創造性とは、既にあるものの模倣ではなく、何か新しいものを作ること」であり、さらに言うと、人間の芸術家は過去の作品から「盗み」、新しいものを作り出す。こういう「再解釈」は AI には可能だろうか。
こないだの AI とのペアプログラミングの話ではないが、ルキダスはここでも人間と AI の共同作業の可能性を考えているようだ。
さて、偶然にもこのテーマを考える上で参考になる本の邦訳が来月出る。邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2020年版)でも取り上げたマーカス・デュ・ソートイの『The Creativity Code』の邦訳『レンブラントの身震い』である。
- 作者:マーカス・デュ・ソートイ
- 発売日: 2020/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
うーん、この書名だと AI の創造性、AI が作り出す芸術についての本だと分からないのではないだろうか? 刊行までまだ間があるので、内容を知りたい方はカタパルトスープレックスや翻訳書ときどき洋書の書評をどうぞ。
ルキダスの文章では、『レンブラントの身震い』という書名の元になったと思われるレンブラントの「新作」を party trick と切り捨てているが、果たして AI は新しい芸術を作り出せるのだろうか。