Wikipedia は2021年に20周年を迎えており、ワタシもそれに合わせて書かれた本から2つ文章を訳している。
- ロールプレイングゲームとしてのウィキペディア、もしくは一部の大学人がウィキペディアを好きではない理由
- ウィキペディアにはバイアスの問題がある(Wikipedia Has a Bias Problem 日本語訳)
さて、今ではその Wikipedia をはじめとする13のプロジェクトをまとめる Wikimedia 財団が設立20年になるのを受け、その歴史を振り返る文章である。
Wikimedia 財団の創始者はもちろんジミー・ウェールズだが、財団設立当時、Wikipedia はたった2台(!)のサーバで運営されていたとか、当時は有給のスタッフがいなかったので、現在も財団の要職にある当時学生2人がボランティアとして多大な時間を費やしたといった話は隔世の感があるが、じきに Wikipedia が世界有数の人気サイトになったために、彼らはその対応を通じてコンピュータ工学の学位に匹敵するだけの経験をしたそうな。
現在、Wikimedia 財団は300人をこえるスタッフを雇用し、彼らは月間180億件ものアクセスに対応し、セキュリティの維持や新機能の追加で新たなニーズに取り組んでおり、オープンソース開発者の参加を歓迎しているとな。
その後は、Wikipedia 編集のユーザビリティを高めた VisualEditor の導入の話、モバイルへの対応、翻訳ツールなどの話が続くが、その後に続く「知識の共有を阻む政府や法律の障害を排除する話」は、かつてのオンライン海賊行為防止法(Stop Online Piracy Act、SOPA)、国家安全保障局(NSA)との闘い、そして最近のトルコでのブロッキングなどの事例が挙げられているが、特に権威主義国家で Wikipedia がブロッキングされたというニュースは珍しくなくなっており、これ関係の問題に対する透明性の確保は、財団の目下の(そしてこれからも)重要な課題に違いない。
そうしてウィキメディア財団は長期的視点でウィキペディアをはじめとするプロジェクトを持続させながら、自由な知識の創造と共有を可能にしながら信頼できる情報源としてインターネットユーザのニーズに応えるという重要な役割を果たしている。
そういえば、今年の3月にワタシは(ジミー・ウェールズからの強い調子のメールに気圧されて)ウィキメディア財団に少額ながら寄付をさせてもらっている。