当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

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はてなについて今思うこと(は特にない)

微塵の愛情もなかったし、未練もなかったが、捨てるだけの張合いもなかった。

坂口安吾「白痴」

以前から、ワタシがはてなについて何か批判的なことを書くと、はてなブックマークで「愛のある批判」といったぶくまコメントがつくのが少し不思議だった。

その人がそう感じるのなら、それに文句をつけることもないと思っていたが、やはり当人が思うところと距離があるのも問題かもしれない。かつてはともかく、今はてな並びにそのサービスに対して愛はない。そして、それは別に今始まった話ではない。

『情報共有の未来』の中で100箇所以上出てくる「はてな」という単語が、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』では1箇所たりとも出てこないのは、つまりはそういうことである。

5年ほど前、当時はてなの社員だった方に、話をしにはてなに遊びに来ませんかと雑談の中で打診されたことがあるが、「御社とは距離を置きたいので」とお断りした。その方もそうだが、ワタシがお会いしたことのある社員の人も大方既にはてなを離れており、今も残るのは大西さんなどごくわずかで、個人的なつながりはとっくにないに等しい(モーリさんは、はてなに入られるずっと前から知っているので別枠)。

あとこの会社の創業者に対しても、角川インターネット講座への寄稿をめぐる不愉快な経験により、個人的な信頼は失われている。それだってもう三年前の話だ。その経緯については、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』に収録した「ラストスタンド」の章のあとがきに書かせてもらった。

だから、もうとっくに義理も期待もない。ワタシがはてなについて筆誅に類することを書いたとしても、「愛のある批判」といったフォローは必要ないし、はてなの側も遠慮なく対抗措置をとってくれてかまわない。

今は、はてなダイアリーからはてなブログへの移転が成功裡に済むことを願うばかりである。それが済めば、はてなのサービスにコメントすることも特になくなるのではないか。

2018年に刊行されたルー・リード関連書籍の紹介

ルー・リードの初期の未発表の詩集が4月に刊行された話はここでも紹介済だが、その後もルー・リードに関連する書籍がいくつも出ているので、まとめておきたい。

ここでもアルバムについて本を書く「33 1/3シリーズ」が100冊を超えていたとして三年前に紹介した 33 1/3 シリーズにおいて、エズラ・ファーマン(Ezra Furman)がルーの代表作『Transformer』をタイトルに冠した本を書いている。

Transformer (33 1/3)

Transformer (33 1/3)

TRANSFORMER-UPGRADED VERS

TRANSFORMER-UPGRADED VERS

エズラ・ファーマン自身バイセクシャルを公表している人で、ルーは特別な存在なのだろう。

これは変わった本である。映画ではスパイク・リー作品への出演、テレビドラマでは『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の主人公の甥のクリス役で知られるマイケル・インペリオリが、1970年代のニューヨークでルー・リードと友達になる少年が主人公の小説を書いている。

The Perfume Burned His Eyes

The Perfume Burned His Eyes

The Perfume Burned His Eyes (English Edition)

The Perfume Burned His Eyes (English Edition)

ジョイス・キャロル・オーツやリディア・ランチが推薦の言葉を寄せてますね。

ルー・リードのインタビューをまとめた My Week Beats Your Year: Encounters with Lou Reed という本が今月刊行されるとのこと。だが、Amazon で検索しても(日本、本国とも)ヒットしないんだよなぁ。

ルー・リードといえばインタビュアーに対する当たりの強い人として知られるので、緊張感と辛辣さに満ちた本かもしれませんな。

さて、実は今、牛歩を歩みでジェレミー・リード『ワイルド・サイドの歩き方 ルー・リード伝』(asin:4907435614)を読んでいるところだが、著者の独断が鼻につく上に不十分な記述が散見される本で、正直読んでいてところどころイラっとくる。なんでこれをルー本人が評価したのかよく分からない。

しかも、ピーター・ドゲット『ルー・リード ワイルド・サイドを歩け』(asin:488682174X)と同じ情報源を訳しながら、訳が悪くなっている箇所もある。

これが決定的な伝記になるのはシャクなので、Anthony DeCurtis による伝記本『Lou Reed: A Life』の邦訳が出てくれることを期待してしまう。

Lou Reed: A Life

Lou Reed: A Life

Lou Reed: A Life (English Edition)

Lou Reed: A Life (English Edition)

レディ・バード

以下は、やはりブログ休止中に観た映画の感想など。

やはり、これも故郷の映画館で国内時差を使い観れた映画である。途中トラブルがあったらしく、上映がしばらく止まるという多分人生初の体験ができた(いや、前にもあったかな?)。

レディ・バード』は、(自称/他称の違いはあるにせよ)「バード」が「バード」でなくなるまでの物語という意味で、グレタ・ガーウィグ版『個人的な体験』ともいえる。というか、よく考えると『フランシス・ハ』と大枠同じ話に思えたりもするが、映画として好きなのは本作のほうである。

カリフォルニア州サクラメントという、ロサンゼルスやサンフランシスコのような大都会ではない保守的な街に住む、貧困層ではないが父親が失業問題を抱え、母親にプレッシャーがかかる裕福でない家庭に育った主人公の、保守的な街では少し浮いているがエキセントリックまではいかない中途半端な感じをニュアンスに富んだ演出で魅力的なものにしている。

ミッション:インポッシブル/フォールアウト

本作について、とにかくトム・クルーズがやりたいアクションを優先して撮影し、後から脚本のつじつまを合わせたという無茶な話を聞いていたので、そうした整合性は期待しなかったが、前作『ローグ・ネイション』からの継続性と『オデュッセイア』という枠でなんとかつなぎとめていた感じである。『ゴースト・プロトコル』には劣るが、そういう比較をしてもしょうがない気になるアクションの連続だった。

本作でトム・クルーズが挑む、彼をかっこよく見せるよりも危険に晒すことが優先されているような、年齢を超越したアクションを見るにつけ、昔柳下毅一郎さんが、アーノルド・シュワルツェネッガーの主演作の傾向を評して、シュワルツェネッガーは深刻なアイデンティティクライシスの問題を抱えているのではないか、と書いていたのを思い出した。

当時、柳下さんの文章を読んだワタシは、いやぁ、シュワちゃんが大暴れするのに設定上のギャップがあったほうが際立つという計算で出演作を選んでいるだけなんじゃない? と思ったものだが、危険極まりないアクションにスタントなしで挑むトム・クルーズの没頭は、一種の自殺願望のあらわれではないだろうか? とすら思ったのである。

昔からアクターアスリートと評したくなる人ではあるが、他の人がツイッターに書いていた表現を借りると、「このアクションは、むしろ CG であってくれ」とまで思ってしまう本作は尋常ではない。このシリーズにおける主人公の右腕役となった感のあるサイモン・ペッグが、「もう少し現実というものを味わってみるもの良いのかなと思うこともあります」と語るのも、そうした危険を感じているから……でないならよいのだけど。

カメラを止めるな!

カメラを止めるな!  [Blu-ray]

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とにかく面白いと評判になっていた映画だけどなかなか観ることができず、これが福岡に住んでたら(東京と同時期にキャナルシティ博多で上映を開始していたので)とっくに観れたはずなのにと恨めしく思っていたが、8月半ばになってようやく観れた。

念のため、以下ネタバレ注意、と書いておく。

とにかくできるだけ事前情報を入れないように神経をとがらせて、ツイッターの言及やブログエントリをシャットアウトし、また同時に期待値を高めすぎないように自己抑制したおかげで、こういう映画だったのか! と大満足でした。ポン!

……なのだけど、実は情報シャットアウトには失敗していたのである。よりにもよって、上映直前にツイッターのタイムラインを眺めてたら、三谷幸喜の『ラヂオの時間』(asin:B000BN9ADO)と比較する人のツイートをうっかり見てしまったために、中盤以降の展開がほぼ読めてしまったのは痛恨だった。

本作については原作/原案問題が勃発してしまったため、「パクリ」とかしょうもない言葉がタイトルに載ったニュース記事を見て腹立たしい思いをしたが、創造性は優れた過去の上に築かれる。本作を観て『ラヂオの時間』を連想する人もいるだろうし、それを言うならウディ・アレンの『ブロードウェイと銃弾』(asin:B0076S5KU4)を連想する人もいるかもしれない。

本作は低予算ながら、そうした過去からの優れた継承があり、何より映画への深い愛情を感じる素晴らしい作品だった。そういう映画を観れて、ワタシはただ嬉しい。それで十分である。

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