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想いと表現の間で肩にゼリーをのせ君がもっともこわがることをしよう

こないだのルー・リードの偏屈オヤジぶりについてのエントリriko さんがブックマークされていて、それを見て今更ながらハタと思いあたった。

この方のダイアリーの「想いと表現の間」というタイトルは、Between Thought and Expression じゃないか。

これはルー・リードが在籍したヴェルヴェット・アンダーグラウンドの三枚目(asin:B000002G7G)に収録された "Some Kinda Love" という曲の一節である。90年代はじめに編まれた彼のアンソロジー、並びに詩集(asin:4309201911)のタイトルにも冠せられている。特に前者に "Some Kinda Love" が収録されていないことを考えると、このフレーズの価値の高さが逆に分かる(もっともそのアンソロジーの日本盤には、『思考と象徴のはざまで』という誤訳の襤褸が着せられてしまったが)。

烏賀陽弘道さんも「文学に肩を並べるロックだってある」でこのフレーズを称えている(でも、惜しい。"Between thought and expression, lifetime lies" ではなく "Between thought and expression lies a lifetime" が正しい)。そうだよな、ワタシもこれからは Between Thought and Expression を座右の銘にしよう。

しかし、である。ワタシがルー・リードが死ぬほど好きなのは、彼の歌詞が文学的だったり哲学的であったりするからだけでなく、それと張り合う闇もあるからだ。

"Some Kinda Love" に関して言えば、「思考と表現の間に人生がある」、「愛の種類に上下はない」という必殺のフレーズと、最後の「肩にゼリーをのせてごらん/君がもっともこわがることをしよう」から「赤いパジャマを着て調べてごらん」にいたる極めていかがわしい歌詞が一曲の中で見事に拮抗、共存している。

それがこの曲をスリリングなものにしているとワタシは思うし、特にその背徳的な部分は聴いていてゾクゾクくる。そうした意味でワタシがこの曲をヴィスコンティの『イノセント』や谷崎潤一郎の『瘋癲老人日記』と同列に評価しているのは以前書いた通りである。

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