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悪人

悪人 スタンダード・エディション [DVD]

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元々観に行くつもりはなかったのだが、文化系トークラジオ Life の「文化系大忘年会2010」で鈴木謙介さんが「方言指導が完璧」と言っていたのが気になり、(日本アカデミー賞作品賞候補を集中して)再映している映画館に今更行ってみた。

本作は殺人事件の被害者の女性が福岡に住み、その加害者とされる男性が長崎、その男性と逃避行をする女性が佐賀……と北部九州を舞台にしている。天神の交差点など自分にも身近な風景をスクリーンで観るのは地方人にとって少し不思議な感覚だった。男性が住む西彼杵郡はワタシの父方の実家があった地方でもあり、あの海岸線の風景はやはり馴染み深い。ワタシ自身は耳がよくないので断言はできないが、確かに鈴木謙介さんが言われるようにそれぞれの方言がちゃんと使い分けており、特に妻夫木聡演じる加害者の喋り口調がワタシの幼馴染の男性を、樹木希林演じるその祖母の口調がワタシ自身の老母を想起させ、とても平静な気分では見れなかった。あれが樹木希林でよかった。10歳若い菅井きんが演じていたら、ワタシは映画館で発狂していたかもしれない。

これが映画として優れたものかどうか正直ワタシには分からない。主人公の男女の逃避行について少しも同情的な視点でワタシは見れなかった。ただ一方で、ワタシもこの歳になると、生きる上でどうしようもなく貧乏くじを引かされること、それを引き寄せるどうしようもない境遇があることを実感できる。本作の場合、特に身近に。

本作における深津絵里の演技は見事だったと思うが、いくら薹が立ったとはいえ彼女は凛とした美しさをたたえていて、ワタシは彼女のファンなのでいいのだけど、本作のヒロインとして適任だったか。ただ、本作の主人公二人(金髪をみると津田大介に見える病のため、二人が最初に出会う佐賀駅の場面は笑い出しそうになった)が醜男とブスの組み合わせならリアルさは増したかもしれないが、客は入らんだろう。難しいところである。

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