- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2011/10/29
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1996年にアルジェリアで起きた武装イスラム集団によるフランス人修道士誘拐事件を題材とした映画であるが、これだけ地味な映画がフランスで記録的なヒットということは、この事件が今なお彼らにとって大きな禍根を残しているということなのか。
正直なところ、修道士たちのストイックな日常を淡々と描く前半部にはかなり眠気を誘われる。考えてみれば、この映画に劇的な内容は望みようがない。主人公たる修道士たちが派手なドンパチを……というのは論外だが、政治的に策を弄したりうまく立ち回るとしても、それは彼らが生臭坊主ということに他ならない。彼らにできることは、人々の言葉に耳を傾け彼らにできることを為し、そして神に祈ることだけなのだ。
やがてたるかった修道士たちの日常生活が違ったものとして映ってくる。彼らのつつましい日常は、口をあけていて降ってきたものではないことを思い知らされるわけだが、彼らは厳重な勧告を受けてもアルジェリアを去ることを選ばなかった。現実主義的観点からその決断を批判することも可能だが、彼らは自由であるために自らの日常を貫くことを選んだ。正直なところ、映画の中の修道士たちの言葉はワタシには理解しがたいものもあった。しかし、ワタシ自身が今、日常生活を取り戻し守ることをどうしても考えてしまうことがあり、そこにいたってようやくこの映画を身近に感じることができた。
本作のクライマックスである最後の晩餐、本作においてはじめて音楽が大々的に使われるが、そのとき映し出される修道士たちの表情、特にその変化には心揺さぶられるものがあった。