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アメリカン・スナイパー

還暦過ぎて撮る映画が良くなっていく妖怪クリント・イーストウッドの新作はできるだけ映画館で観たかったのだが、前作は仕事が忙しかったかで観逃してしまい、本作も危うくそうなりかけたのだが、ようやく映画館で観れた。

本作はネイビーシールズ最強の狙撃手クリス・カイルを題材とする映画で、昨年アメリカでもっともヒットした映画である。題材が題材だけに、本作の政治的意図や影響も議論になり、イラク戦争後の『ミスティック・リバー』のような後味の悪い映画を危惧していた。正直、そういう要素がないとは言わないが、心配したような単純な映画ではなかった。

ワタシは基本的にドンパチが嫌いで、特に本作のように性質上どこから撃たれるか分からんという状況が続くのは疲れてしまうのだが、ところどころなんでそんな演出すんの? と不思議になるイーストウッドらしい違和感、異物感あるチープですらある演出を交えながら(なんで赤子が人形なんだよ)最後までみせる。

やはりワタシが印象に残ったのは、なんというかいかにもレッドネックのアメリカ人らしい単純さというか疑うのことのないクリス・カイル(映画の最後になって、彼がワタシよりひとつ年少、つまり同世代なのを知って驚いた。が、そんなものか)という主人公が、どんどん心をむしばまれていく様であった。

その点においてイーストウッドは、残虐な主人公の能天気というか迷いのない内容らしい自伝を、殺してきた相手を「蛮人」と呼んではばからないところなどちゃんと描きながら、そのまま鵜呑みにもせずしっかり人物造形していると思った。もちろん戦場の場面も怖いのだけど、帰国してからの場面も何をやらかすのかと怖い。そうして緊張が途切れない中でドーンと次の派遣の場面につながる、という展開が何より精神的圧迫があった。

ただ本作は、アメリカ最強のスナイパーと、それに対する元オリンピック選手の敵スナイパー(劇中、カイザー・ソゼと呼ばれているのが面白かった)との決闘という西部劇的準拠枠のエンターテイメントとして成立していて、その古典的構図に抵抗を感じる人はいるだろうなと思った。

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