最近では映画の宣伝でも「ロッテントマトで9X点!」とか普通に使われることが多くて、そういうものを見るとダセーっとか思ったりもするが、とか言いつつ小心者のワタシも残された短い時間を面白くない映画でムダにしたくないと Rotten Tomatoes を参照することが確かにある。
もっとも、そうやって選んだ映画評論家受けする映画を観に行って全然ピンとこなかったほうがよほど陰惨な気持ちになったりもするのだが。
さて、Rotten Tomatoes(や同種のサイト)の点数を切り口にした映画のおススメリストというのも定番コンテンツだが、ここでむしろ Rotten Tomatoes では低評価だが好きな映画リストというのどうだろうと思った次第である。
ここでの低評価は、批評家評価のトマトが赤色でなくなる60点(60%)未満を基準とする。
ただワタシの場合、映画の趣味に特にクセがなく、Rotten Tomatoes の点数と評価が明らかに食い違う作品は意外に少なかったりもするので、そんな変わったリストにはならなかった。これを見て、批評家受けは悪いが我こそ面白いと思う逸品映画を(ブックマーク)コメントなりで教えてほしいというのが真の趣旨だったりする。
以下、だいたい公開年が古い順に並べている。Rotten Tomatoes の評価は飽くまで本文執筆時点。
マイケル・サーン『マイラ ―むかし、マイラは男だった―』(1970年)(RT:27%、ワタシの感想)
これは今観ても新鮮な映画で、斬新過ぎて当時の批評家には理解できなかった可能性もある。この映画が大不評だった理由は、岸田裁月さんの文章を参照いただきたい。
ジョン・ランディス『サボテン・ブラザーズ』(1986年)(RT:46%)
ワタシはかつて『ギャラクシー・クエスト』について、「この映画は『サボテン・ブラザーズ』と大体同じ話だけどそれを凌駕している」と書いていて、その評価は今でも変わらないが、『サボテン・ブラザーズ』も好きである。
この映画は、Saturday Night Live の製作者のローン・マイケルズと、数々の優れた映画音楽をてがけてきたランディ・ニューマンが、それぞれ本業の製作、音楽だけでなく脚本にクレジットされている極めて珍しい作品でもある。
ロバート・ハーモン『ヒッチャー』(1986年)(RT:62%)
おい、60%超えてるじゃないかと言われそうだが、これは近年の再評価で点数が上がっているのが原因で、公開当時はロジャー・イーバートが星ゼロ個の評を書くなどはっきり批評家受けは悪かったので、あえて入れさせてもらった。
ワタシはこの映画を「ホラー映画ベストテン」の8位に入れるくらい評価している。ルトガー・ハウアーがとにかく怖いのだ。
小説家の藤野可織さんが好きな映画でもあり、今年『ヒッチャー ニューマスター版』が公開された際には、「殺人鬼たちの正体を教えてくれた映画として、暗黒青春映画として、「ヒッチャー」はいつまでも私のもっとも大切な映画のひとつだ」と賛辞を寄せている。
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オリバー・ストーン『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994年)(RT:48%)
今観るとロバート・ダウニー・Jrやトミー・リー・ジョーンズのオーバーアクトがウザいかもしれないが、ジュリエット・ルイスのベストワークという意味で、この映画は嫌いになれない。
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ロバート・マンデル『野獣教師』(1996年)(RT:42%、ワタシの感想)
『ミスター・グッドバーを探して』のラストで鮮烈な登場を果たしたトム・ベレンジャーは、『プラトーン』の悪役でオスカー候補となり、『メジャーリーグ』のような良質な娯楽ヒット作に出ていた頃あたりが絶頂期で、本作も『インセプション』でメジャー作に復帰するまでに多く出たB級作品の一つなのかもしれないが、ワタシは好き。(未だ批評が載っていた頃の)allcinema の評も参考まで。
DVD 出てないんか……。
フレッド・スケピシ、ロバート・ヤング『危険な動物たち』(1997年)(RT:55%、ワタシの感想)
まぁ、ジョン・クリーズ先生に対する贔屓目ということで。『ワンダとダイヤと優しい奴ら』と同等の傑作とはワタシも言わないが、これはこれで良くできてると思うわけで、『ワンダ』の反動の過小評価はあると思う。
スティーヴン・ソマーズ『ザ・グリード』(1998年)(RT:28%)
えーっ、この映画B級活劇としてすごく面白いのにすごく評価低いね。モンスターが強力で人を殺しまくるのは当然として、登場人物がいずれもひとクセあってキャラが立ってるのがいいのだ。岸田裁月さんの評も参考まで。
この映画で手腕を認められた監督が次に手がけて大当たりしたのが『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』なわけで、この映画の低評価は批評家に見る目がなかったと言いたくなる。
テリー・ギリアム『ラスベガスをやっつけろ』(1998年)(RT:49%、ワタシの感想)
当時絶頂期にあったジョニー・デップのかっこいい姿を期待して観に言ったらハゲ親父をやってて、しかもベニチオ・デル・トロもデブの弁護士役、しかもこいつらの行状がとにかく不快という、間違いなく不機嫌になる映画なのだけど、それこそテリー・ギリアムが目指したものだから仕方ないのである。
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スティーヴン・ノリントン 『ブレイド』(1998年)(RT:55%)
ギレルモ・デル・トロが手がけた2作目のほうが批評家受けはいいのかもしれないが、ワタシはこの1作目のほうが好き。
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カート・ウィマー『リベリオン』(2002年)(RT:41%、ワタシの感想)
ガン=カタが堪能できる以上の何を望むって言うんだ? この映画の監督の現時点での最新作『X-ミッション』もなかなか狂ってるらしいが、観れてない。
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エリック・ブレス、J・マッキー・グルーバー『バタフライ・エフェクト』(2004年)(RT:33%、ワタシの感想)
これを「SF映画ベストテン」に選出するのはワタシだけだと思うし、確かに脚本のおかしなところをスピード感で押し切っているところは確実にあるのだけど、それにしてもこの低評価は納得いかない。
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フランシス・ローレンス『コンスタンティン』(2005年)(RT:46%、ワタシの感想)
ホラーのようでその実バカ、なところがキアヌ・リーブスによく合っている。あと主人公にぶん殴られてもすがすがしい表情のティルダ・スウィントンが良かったですね。
本作は批評的にも商業的にも成功しなかったが、キアヌ・リーブスは続編の出演に前向きで、それを知ったサンドラ・ブロックが、お前は『スピード』の続編断ったのに、なんであんな駄作の続編に出たがる! と突っ込んだという話を読んで笑った覚えがあるが、続編の話はさすがにもうないか。
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リチャード・カーティス『パイレーツ・ロック』(2009年)(RT:59%、ワタシの感想)
リチャード・カーティスの美意識には合わないところもあるのだけど、『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』なんかよりこっちのほうがはっきり好き。
フィリップ・シーモア・ホフマンとビル・ナイが共演しているというだけで、ワタシ的にはプラス300点になるわけです。
この映画、本国での The Boat That Rocked という原題がダメだった気がする。
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クリント・イーストウッド『J・エドガー』(2011年)(RT:43%、ワタシの感想)
この映画の不評には、老け時代のメークアップがお粗末という評判が確実にあったと思うのだけど、ワタシがイーストウッドの映画に求めるものはそんなものではないので全然気にならなかった。後に彼は『アメリカン・スナイパー』で赤子役に人形をあてがうという暴挙を当然のようにやっている。
あとこの映画は、トム・クルーズの物まねがもっともうまい役者のマイルズ・フィッシャーが出た一番メジャーな作品ということになろうか。
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ニマ・ヌリザデ『プロジェクトX』(2012年)(RT:28%、ワタシの感想)
日本での公開当時『クロニクル』と対で語られていた記憶があるが、そちらとは好対照な評価の低さである。それには本作のミソジニーというか政治的な正しくなさが大きいのは間違いない。逆に言うと、本作は政治的には明らかに正しくないが面白い映画はあるという実例、と書くと怒られるだろうか。
アダム・シャンクマン『ロック・オブ・エイジズ』(2012年)(RT:43%、ワタシの感想)
リストに入れておいてなんですが、映画としては全体的に割とどうでもいいのだけど、アレック・ボールドウィンとラッセル・ブランドのカップルが見れるというその一点だけでプラス200点なので。
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フィッシャー・スティーヴンス 『ミッドナイト・ガイズ』(2012年)(RT:36%、ワタシの感想)
この映画は『ハングオーバー 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』以降いくつも作られた一夜の大暴れもの、しかもそのジジイのファンタジーバージョンなのだけど、アル・パチーノとクリストファー・ウォーケンが、それぞれいかにもらしい役をしっかりやった共演が観れただけでワタシは満足です。
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ピーター・バーグ『バトルシップ』(2012年)(RT:34%)
昔、『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』を巡る論争があり、当事者のお二人のいずれのブログも楽しく読んでいたワタシはなんというか唖然としてしまったのだけど、娯楽映画をネタとして笑いツッコミながら見るというのは十分アリだろう。
本作は主要キャストに浅野忠信さんが出ているおかげもあって、日本人はネタとしてこの映画を楽しむことができて良かったと思います。
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ニール・ブロムカンプ『チャッピー』(2015年)(RT:32%、ワタシの感想)
冷静に見ると、結局これも『第9地区』と大枠同じ話じゃんと思うし、監督は本作以降あまり話題になってないということを見ると本作の低評価も間違ってはいないのかもしれないが、このニール・ブロムカンプという人の悪趣味さが憎めない。
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ここまで書いてから気づいたのだが、一部似た趣旨の本が既にあるんですね。Amazon のページを見る限り、かぶっているのは『ブレイド』だけのようだが。
いとしの〈ロッテン(腐った)〉映画たち: 映画批評サイト「Rotten Tomatoes」がおすすめする名作カルト、過小評価された傑作、ひどすぎてイケてる映画たち
- 作者:ポール・フェイグ
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- メディア: 大型本
[2021年05月25日追記]:あさやんさんから教えていただいたが、『いとしの〈ロッテン(腐った)〉映画たち』で紹介されている映画とワタシのリストでかぶるものは、『ブレイド』と『サボテン・ブラザーズ』の二作のようだ。
新刊書籍「いとしの〈ロッテン(腐った)〉映画たち」は、2019年に刊行された「Rotten Tomatoes: Rotten Movies We Love: Cult Classics, Underrated Gems, and Films So Bad They're Good」の邦訳のようですね。書籍情報から、紹介されている作品101本の一覧を作ってみました。https://t.co/d0ho8PRxX1 pic.twitter.com/SekwinAGyO
— あさやん (@asa_yang) December 29, 2020