毎年恒例の「男の魂に火をつけろ!」における映画ベストテン企画だが、今年は音楽映画がお題で、これならワタシも参加できるだろうと身を乗り出した。
こういうのは気分で変わるし、扱う音楽も映画の種類もフィクションから伝記からドキュメンタリーまでと多岐にわたるものから選ぶので順位も不同ではないのだが、とにかくトップ10を選んでみた。
- ジョナサン・デミ『ストップ・メイキング・センス』(1984年)
- ミロス・フォアマン『アマデウス』(1984年)
- マーティン・スコセッシ『ラスト・ワルツ』(1978年)
- ジョン・ランディス『ブルース・ブラザース』(1980年)
- リチャード・リンクレイター『スクール・オブ・ロック』(2003年)
- サーシャ・ガヴァシ『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』(2009年)
- ポール・ジャストマン『永遠のモータウン』(2002年)
- エリック・アイドル、ゲイリー・ワイス『オール・ユー・ニード・イズ・キャッシュ』(1978年)
- フランク・ロッダム『さらば青春の光』(1979年)
- シェーン・メドウス『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』(2013年)
影響を受けないよう、「男の魂に火をつけろ!」を含め、他の人のチョイスはなるだけ見ないで選んだので、あとになってあれを選べば! というのがあるかもしれない(ヒップホップに関する映画がないところはちょっと手落ちかも)。それがなくても「どうしてあの映画を選ばない?」というのが必ずあるだろうが、大方「ワタシがそれを観たことがない」というのがほぼその答えだったりする。ワタシは映画初心者なので。
それでは選んだ各作品について簡単に触れておく。
ジョナサン・デミ『ストップ・メイキング・センス』(1984年)
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- トーキング・ヘッズの映画『ストップ・メイキング・センス』をYouTubeを使って解説してみる - YAMDAS現更新履歴
- 史上最高のロック映画『ストップ・メイキング・センス』公開30周年を記念したジョナサン・デミ&デヴィッド・バーンのインタビュー - YAMDAS現更新履歴
ワタシが選ぶなら、1位はこの映画しかありえないわけである。世間的には『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミの出世作にして、ライブ映画の最高峰である。
ラジカセをバックに歌い出す "Psycho Killer"、ライブをやりながらステージを組み上げていくという中学生みたいな発想の現実化、設営から照明まで活躍する黒子さん(文楽の影響)、デヴィッド・バーンのズートスーツ、そして何よりライブバンドとして円熟期にあったバンドの豊かな演奏――何もかもが素晴らしい。
ワタシの故郷にある大音量でロックを聴ける店で、泥酔して客が他にいないとこの映画のレーザーディスク(時代を感じますな)をリクエストして、この映画がいかに素晴らしいかというのをえんえん語り倒すという非常に迷惑な行為をワタシは三回はやっていますよ!
ミロス・フォアマン『アマデウス』(1984年)
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この映画をワタシは映画という芸術形態における頂点の一つと思っている。ただ映画における山頂は一つではないし、この映画が頂点を極めているのは必ずしも「音楽映画」の山ではないので、とりあえず二位に入れておいたが、このリストで唯一クラシック音楽を扱った映画ですね。
最後のモーツアルトとサリエリと向かい合い、レクイエムを二人で完成させる場面は特に見事だった。
これは劇場公開版より20分長いディレクターズカットを観るべきである。
マーティン・スコセッシ『ラスト・ワルツ』(1978年)
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ザ・バンドのライブ引退公演(誤解されているが、解散公演ではない)にして、パンク勃興以前のアメリカンロックの総括となった歴史的メルクマールと評されていたが、レヴォン・ヘルムの自伝発表以降は、策士ロビー・ロバートソンの小賢しい仕掛けといささか評価が下がった気配もある。
が、結局映画として素晴らしいんですよ。ロバートソンの友人マーティン・スコセッシが一流のカメラマンを配したことで、見事なライブドキュメントになっている。
出てくる人たちが豪華だが、クラプトンが出てくるとロバートソンの演奏のテンションがくいっと上がるところにこの当時のクラプトンの位置づけを実感できる。
ジョン・ランディス『ブルース・ブラザース』(1980年)

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以前にも書いたことがあるが、この映画はコメディーとしてみるとかなり強引だが、素晴らしい音楽が入ることで魔法がかかってるんですね。
出てくるソウルグレイツは皆すごいのだけど、個人的にはアレサ・フランクリンが歌い出す瞬間の衝撃は、映画における音楽で受けたショックの中で最大のものの一つである。
リチャード・リンクレイター『スクール・オブ・ロック』(2003年)
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駄作と良作の落差が激しかった頃のリチャード・リンクレイターの快作にして、ジャック・ブラックの出世作である。
現在はミュージカルにもなっているだが、とにかくロックの楽しさを感じることができた映画ですな。
サーシャ・ガヴァシ『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』(2009年)
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こういうリストを作るなら、だいたいの人が『スパイナル・タップ』を選ぶのだろうが、ヘソ曲がりなワタシはそれよりも本作を推したい。
両方観てたらニヤリとくるところの多い笑いどころのある映画だが、ヘラヘラ観ていたら気がつくとハラハラしてしまい、最後にはとめどなく涙を流してしまった。
ポール・ジャストマン『永遠のモータウン』(2002年)
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モータウンを影で支えたファンク・ブラザーズに光を当てた感動のドキュメンタリー。店でかかった "My Girl" の不滅のイントロに高揚して思わず「これがオレが――」と言いかけるもウェイトレスに「はぁ?」という顔をされてすごすごと引き下がる話、人種差別についての質問に、白人メンバーがそれを否定しながらどうにも辛そうに言葉を詰まらせてしまうところなど胸をつくシーンがいくつもある。
ライブシーンも、ブーツィ・コリンズやチャカ・カーンといったモータウンのイメージから少し外れた人たちが歌っているのが面白いし、ファンク・ブラザーズの年季の入ったブルースフィーリングを感じさせる演奏も良かった。
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音楽映画縛りなら、ビートルズの映画は一つは入るわな……とここで一つ思い当たってしまったのが、ワタシ、ビートルズ映画でちゃんと全部通して観たのって一つもなかった。これには自分自身驚いたが、よってこのリストに選べない……。
だからというわけではないが、ビートルズパロディの最高傑作であるラトルズを選んだ(これはテレビ映画なので、本当なら対象外にすべきなのかもしれないが)。モンティ・パイソンと SNL 人脈の邂逅にして、ミック・ジャガー、ポール・サイモン、何よりジョージ・ハリスン本人が顔を出すパロディの枠を超えた豪華さである。
フランク・ロッダム『さらば青春の光』(1979年)
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これはザ・フーが好きでないとなんじゃらほいという映画なのかもしれないが、ワタシとしてはこれを抜かすわけにはいきませんな。
本作にはスティングが極めつけのモッズを演じているが、モッズの栄光でなしに、青春のどうしようもない情けなさを描いたことで本作はマスターピースとなり、ブライトンの海と空と崖が記憶に焼きついたのである。
シェーン・メドウス『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』(2013年)

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リチャード・カーティスの『パイレーツ・ロック』とキャメロン・クロウの『あの頃ペニーレインと』のどちらにしようか迷いに迷い、仕方なく両方とも外してこれにした。
再結成したバンドが演奏する曲をいっぱい聴きたいという人には本作は不満なはずだ。なぜなら、これはバンドと同じくらい、彼らのファンの姿をとらえることにものすごく時間を割いた作品だからだ。その一人がもうこれ以上ない言葉でストーン・ローゼズというバンドが持っていた魔法を表現している。
こんなに長い時が過ぎて、俺が今でもこんな髪型をしているのには理由がある。俺がネクタイを締めたことがないのにも理由がある。あのアルバムを、俺は今でも毎週聴いているのにも理由がある。そしてそのアルバムは、今でも俺をゾクゾクさせる。
頼むから新譜出してくれよ。