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犬ヶ島

ウェス・アンダーソンのストップアニメーション映画というと、『ファンタスティック Mr.FOX』がすごく評価が高いのだけど、ワタシはなぜかあれが肌に合わなくて、正直彼のストップアニメーション映画はパスしたかったのだが、当代最高の映像作家の一人である彼の新作はやはり映画館で観ようと足を運んだ次第である。

ウェス・アンダーソンというと、強力なヴィジュアルコントロールで知られ、前作『グランド・ブダペスト・ホテル』はその一つの極みともいえるし、それがパロディの対象にもなってからかなり経つくらいである。本作では、作品のこぎれいさにつながりがちなヴィジュアルコントロールは排されており、美しさが失われたヴィジュアルの中で作品が展開するところに、紛れもなく彼の映像作品でありながら、さらに上を目指す感じがあってすごいなと思った。

多分映画としては、『ファンタスティック Mr.FOX』のほうが上なのかもしれないが、個人的には題材的にも本作のほうがよかった。ただし、ワタシが観たのが字幕版なこともあってか、劇中頻繁に登場する日本語を英語字幕で読み、さらに頭の中で日本語にまた訳してしまうような感じがあって(ちょっと説明しにくいですが)、観ていてヘンに疲れたところもある。

本作については、描かれる日本がステレオタイプだとか「ホワイト・ウォッシング」といった批判があるそうだが……バカですか? つーか、本作に描かれる「日本」が実在しない、監督の頭の中にある架空の存在であることが分からない人は映画鑑賞自体に向いていないのではないか。くだらない。この手の指摘って、最終的に自分たちの首を絞めることになるのが分からないのかな。

むしろ本作を観ていて、ウェス・アンダーソンは日本の現在の政治状況について特に知識がないはずだが、そういうのにリンクして観てしまう自分にいささか当惑した。これこそ(監督の)想像力の力だと思う。

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