週末、ワタシも Netflix ドキュメンタリー『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』を観た。これは必見である。
ワタシは2016年に「今回の大統領選挙の結果についてフェイスブックに咎を負わせるのは、いくらなんでもやりすぎだろう」と書いたわけだが、そのときはケンブリッジ・アナリティカのことをよく分かってなかった。現実には、Facebook はワタシなんぞが考えているよりも遥かにユーザの人心を掴んでいた。そして、ケンブリッジ・アナリティカはそれをあくどくハックしたわけである。
市川裕康さんは「監視資本主義」という言葉を使っているが、ちょうど Wired にこの言葉の提唱者であるショシャナ・ズボフの本の書評が掲載されている。「監視資本主義」というコンセプトは、Facebook や Google といった大手プラットフォーム企業のビジネスモデル、そして『グレート・ハック』で描かれるスキャンダラスな民主主義の危機を考える上で欠かせないものである。
『グレート・ハック』の主役の一人が、ケンブリッジ・アナリティカで事業開発責任者を務め、内部告発者となったブリトニー・カイザーなわけだが、市川裕康さんのエントリで、彼女が『Targeted』という本を今年の秋に出すことを知った。
- 作者: Brittany Kaiser
- 出版社/メーカー: Harper
- 発売日: 2019/10/22
- メディア: ハードカバー
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- 作者: Brittany Kaiser
- 出版社/メーカー: HarperCollins
- 発売日: 2019/10/22
- メディア: Kindle版
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「ケンブリッジ・アナリティカの内幕、そしてトランプと Facebook がいかにして民主主義を破壊したか」という副題(本文執筆時点で、Kindle 版とハードカバーで副題が微妙に違うが)や手榴弾の表紙を見るに、彼女に求められているものをぶちまける本になりそう。これは邦訳が出ないといかんよな。
『グレート・ハック』における主要登場人物の一人がイギリスのジャーナリストのキャロル・キャドウォラダー(Carole Cadwalladr)で、つまりは彼女のブレグジットやトランプ周りのロシア疑惑についての記事が衝撃的だったわけだが、ブレグジット運動の首謀者から名誉棄損で訴えられているらしい。
サイモン・シンが英カイロプラクティック協会から訴えられた事例などで、イギリスで名誉棄損の裁判を起こされると多大な時間とエネルギーを割かれることで知られるが、今回も原告が彼女個人を対象にするのは、まだイギリスの名誉毀損法は改正されてないのだろうか。
『グレート・ハック』でも出てくるが、彼女がイギリスにおける過去100年で最大の選挙不正を可能にした Facebook の犯罪性と民主主義の危機をシリコンバレー人種に突きつける TED 講演をまだ見てない人は、この機会に一度是非見てほしい。
ジャーナリストが、脅しでその声を妨げられる事態を見るのは辛いことである。