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来月刊行されるショシャナ・ズボフ『監視資本主義』を改めて取り上げておく

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「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2021年版)」で既に触れているのだが、版元である東洋経済新報社のサイトに個別ページができていたので、改めて来月刊行されるショシャナ・ズボフ『監視資本主義』を取り上げておきたい。

ワタシが「監視資本主義(surveillance capitalism)」という言葉をブログで最初に取り上げたのは2018年5月なので、3年前にさかのぼる。その時点で Wikipedia の項目ができており、ショシャナ・ズボフが発明したこのタームのインパクトが分かる。ワタシも2018年秋に執筆し、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』に収録した「付録A インターネット、プラットフォーマー、政府、ネット原住民」において、ショシャナ・ズボフの原書の名前を(刊行前に)挙げているくらいだ。

そして、そのショシャナ・ズボフによる原書が出たのが2019年1月、瞬く間に評判となり、その年の後半にGuardianが選ぶ21世紀最高の本トップ100にロバート・マクファーレン『アンダーランド: 記憶、隠喩、禁忌の地下空間』(asin:4152099798)と並び、2019年刊行の本で選出されるほどである。

この本のビッグテックは個人の自由を弱体化し、民主主義を蝕んでいるという主張は、その後に出る多くの本の通奏低音となったし、Netflix 制作の『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』、ズボフ自身も出演した『監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影』もこの本なしにはなかったかもしれない。

逆に言うと、少なくとも欧米のインテリ層にはそれだけ人口に膾炙した本なので、そうした論説を追ってきた人であれば、割と当たり前に思えてしまう内容かもしれない。しかも必然的にかなりな値段がついているので、簡単には手が出ないかもしれないが、これはちゃんと読んでおくべき本だと思います。

それで思い出したのは、少し前に『マスターアルゴリズム』邦訳刊行を取り上げたとき、はてなブックマーク「つまり英語読めないと5年も遅れるということですな(´・ω・`)」というコメントがついたこと。

『監視資本主義』の場合、原書刊行からおよそ2年半での邦訳刊行であり、『マスターアルゴリズム』ほどのタイムスパンではないものの、このブログでも何度も邦訳はまだかと書いてきた本である。「英語読めないと×年も遅れる」というのは昨日今日始まった話ではもちろんないが、それがさらに強まるのは困るという気持ちはある。

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