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ポール・グレアムの「アンチとの向き合い方」指南の納得と違和感

ポール・グレアムHaters の日本語訳である。

元々はスタートアップの創業者向けに書いた文章だが、有名になる人みんなに等しく当てはまるという彼の考えは正しい。

それは有名になるとつくファンボーイ(fanboys)とアンチ(haters)である。強迫的で無批判であり、穏やかでいられない点において、両者はコインの表と裏ということだ。

ファンのように、アンチは有名であることの自動的な結果であるように思える。誰でも十分に有名な人はアンチを得るだろう。そして、ファンのように、アンチは嫌いな人が有名になることで活気づけられる。彼らはある女性ポップシンガーの歌を聞く。彼らはそれがあまり好きではない。歌手が無名であれば、彼らはそのことについてただ忘れるだろう。その代わり、彼らは彼女の名前を聞き続け、これが一部の人たちを発狂させているように思える。みんながいつも彼女の話をし続けるが、彼女は少しも良くない! 彼女は詐欺師である! という感じだ。

この「詐欺師」という単語は重要な単語である。これは嫌悪の対象を詐欺師と見なすアンチのスペクトルな署名だ。アンチは彼らが有名であることを否定することはできない。実際には、彼らが有名であることはどちらかといえばアンチの心の中で誇張されている。歌手の名前に関するあらゆる言及がアンチを怒らすので、アンチはそのすべての言及に気づく。アンチは自分の心の中で、歌手が有名であることと彼女の才能の欠如の両方を誇張する。そして、これら2つの考えを調和させる唯一の方法は彼女がみんなをだましていると結論づけることである。

アンチとの向き合い方|Jack / マイクロ起業家|note

このあたりを読んで、ワタシはかつて自分が書いた文章を思い出した。

ワタシが WirelessWire 連載で書いた文章の中で、テック系以外の人たちにも特に多く読まれた文章のひとつで、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』におけるハイライトの一つでもある。この文章における、キャシー・シエラの以下の分析をワタシは連想した。

その一年後、彼女はブランドや製品の「アンチ」についての文章を書きます。彼女の文章の論旨は、「アンチ」は実はそのブランドや製品自体を嫌っているのではなく、それらに夢中な自分以外の人たちを嫌っているのだというものでした。そのとき彼女が使った、特定のブランド/製品がもてはやされると同時に、一部の人間の憎悪を煽る段階を指す「クールエイド・ポイント(Koolaid Point)」という言葉は(彼女のブログの元文章のタイトルでもあります)、実は人に対する「アンチ」の荒らしや嫌がらせにもあてはまることでした。

ネットで認知される女性にとってもっとも危険なのは、他の人たちの注目が「フォロー」や「いいね」や「リツイート」で可視化されるポイント、「アンチ」の荒らしにしてみれば、オーディエンスが注目に値しない女性に迎合し、「クールエイドを飲んだ」ように見えるときだとキャシー・シエラは書きます。

邪悪なものが勝利する世界において - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)

ポール・グレアムは haters と trolls を同一視していないし、両者の主張はまったく同じではないが、近いものがあるだろう。

しかし、ポール・グレアムが指南する「アンチとの向き合い方」の結論が、「そのことについて考える時間を費やす理由はない。これはあなたではなく、彼らの問題である」というのは不満である。本当にそうだろうか?

キャシー・シエラは、自身の体験から、「荒らしには反応するな(don't feed the trolls)」というネットでよく言われるアドバイスに疑問を呈します。荒らしに反応しないでいたら、嫌がらせはエスカレートするばかりではないか。

そこで浮かび上がるのは、本当に「クールエイド・ポイント」に達した個人が荒らしのターゲットになったら、放置しても荒らしの勝利、無視しても嫌がらせはエスカレートして荒らしの勝ち、もちろん荒らしにやり返しても、愉快犯的な連中をエスカレートさせ、どのみち荒らしが勝利してしまうという蟻地獄のような構図です。

邪悪なものが勝利する世界において - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)

ポール・グレアムは元々はスタートアップの創業者に向けて書いており、確かにそれなら創業者個人とアンチの間にスタートアップ(が提供するサービス)が挟まるからそれでよいかもしれないが(法務担当者がいる企業であればなおさら)、単に有名になった個人に「考えるだけ無駄」で済む問題かなとは思う。

アンチと議論するのは間違い、というのはワタシも賛成だが、もう少し有名になった個人がネット中傷に対して法的措置に訴えてもよいだろうという事例が散見されるのも確かなのだ。

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