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人種差別に抗議を表明するGoogleは、その検索エンジンで人種差別を強化している?

ご存知の通り、欧米では多くの企業が Black Lives Matter 運動を支持しており、テック企業(のトップたち)も例外ではない。

しかし、テック企業は「権力の横暴」を助長しているという矛盾を抱えていないか? と疑問を投げかけている記事で、ここで問題となっているのは主に顔認識技術に代表される監視(にも利用されうる)技術で、この記事で Google は警察に位置データを提供していることが触れられている。

さて、Google の金看板は、未だその検索サービスである。しかし、その検索エンジンこそが人種差別を強化していると批判する本が2年前に出ているのだ。Safiya Umoja Noble の『抑圧のアルゴリズム:いかに検索エンジンが人種差別を強化しているか(Algorithms of Oppression: How Search Engines Reinforce Racism)』である。

Algorithms of Oppression: How Search Engines Reinforce Racism

Algorithms of Oppression: How Search Engines Reinforce Racism

  • 作者:Noble, Safiya
  • 発売日: 2018/02/20
  • メディア: ペーパーバック

表紙を見ればお分かりなように、著者の標的はズバリ Google である。

何しろ2年前に出た本なので、この本のことを知ったのはそれなりに前のはずだが、このブログで取り上げる文脈みたいなものをうまくつかめずに紹介する機会を逸していた。しかし、今回の一件を受けて改めて著者の名前で検索をかけたところ、ちゃんと WIRED.jp の記事で彼女の主張が紹介されているのに今さらながら気づいた。

少し長くなるが、以下引用しておく。

ここで思い出したのが、サフィヤ・ウモジャ・ノーブルが著書『Algorithms of Oppression: How Search Engines Reinforce Racism』(抑圧のアルゴリズム検索エンジンがどのように人種差別を強化するか)で取り上げた話である。彼女はこの本のなかでインパクトの大きい例を用いて、Googleの検索結果が誤解を生み出したことを紹介している。

その例とは、ディラン・ルーフによる銃撃事件だ。ルーフは15年、サウスカロライナ州チャールストン市内のエマニュエル・アフリカン・メソジスト・エピスコパル教会に押し入り、礼拝中の9人のアフリカ系米国人を射殺した。彼は動機について、12年のトレイボン・マーティン射殺事件をきっかけに「目を覚ました」と話している。

ルーフの犯行声明によると、彼はGoogleで「black on white crime(白人に対する黒人の犯罪)」というキーワードを検索したという。こんな記述もあった。「最初にたどり着いたのは、極右団体のひとつCouncil of Conservative Citizens(CCC)のウェブサイトだった。黒人が白人の命を残忍に奪った事件について書かれたページがいくつもあり、信じられなかった。そして、このとき何かが大きく間違っていることに気づいた」

政治的対立を生むGoogle検索、そのアルゴリズムが抱える根深い問題 | WIRED.jp

検索エンジンは誰をユーザーとして想定すべきかという問題が、ネットの世界には存在する。ブラジルのミナス・ジェライス連邦大学の研究者たちは、GoogleとBingで「美しい女性(beautiful woman)」を検索すると、結果の上位80パーセントは白人女性の画像になることを発見した。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でインフォマティクスを研究するサフィヤ・ウモジャ・ノーブルは、Googleで「黒人の女の子(black girls)」と入力すると、検索結果はほとんどがポルノ関連になるという事実に気づいてから、本を書き始めた。そして出版されたのが、『Algorithms of Oppression: How Search Engines Reinforce Racism』だ。

Pinterestは検索結果に、静かに「ダイヴァーシティ」を融合しようとしている | WIRED.jp

Google のサービスと人種問題というと、その画像認識システムが「ゴリラ問題」を解決できなかったことがよく言われるが、その金看板である検索サービスも中立ではないと糾弾されているわけだ。

「黒人コミュニティを支持する」という声明文を出したスンダー・ピチャイ CEO は、著者の主張に反論できるだろうか。

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