当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

Twitter はてなアンテナに追加 Feedlyに登録 RSS

Tom Waits "Swordfishtrombones"

CDジャケット

Amazon980円劇場二本立て。

さて、一般にはトム・ウェイツの最高傑作は『Rain Dogs』とされる。ワタシ自身それに異議を唱えるつもりはないが、その前作にあたる本作のほうが、アルバムとしての凝縮度が高く、ワタシは好きである。つまり、これが一番好きなアルバムということ。

本作はウェイツが長年在籍したアサイラムを離れ、アイランド・レコードに移籍して心機一転を図った作品である。音的にもウェストコーストのシンガーソングライターという枠にははなから留まらず、試行錯誤していた無国籍なサウンドが非常にパーカッシブな形で具現化されており、つまりは現在にいたる彼のスタイルが確立されたアルバムといってよい。

ワタシが本作を好きなのは、上に書いたアルバムとしてのコンパクトさもあるが、本作が都市のノイズをも音に取り込みそれに成功しているからだ。楽器構成もフリーフォームで、フェリーニの『道』を意識したビデオクリップが話題となった "In The Neighborhood" がよく挙げられるが、個人的には "Frank's Wild Years" から "Swordfishtrombone" への流れが何度聴いてもゾクゾクくる。特に "Swordfishtrombone" のベース二本とマリンバがおりなすユニークな音は、彼以外には作れないものだろう。

ただ、あと以前から思うことなのだが、トム・ウェイツのアルバムって一曲目が何かヘンな曲が多いんだよな。

Donny Hathaway "Extension of a Man"

CDジャケット

ドニー・ハサウェイのアルバムとしては、人気度はライブアルバムが上なのかもしれないが、彼の作曲家としての素晴らしさが分かるアルバムとなると本作になる。

彼は大学でクラシックも学んだこともある中産階級出身の黒人ミュージシャンのはしりといえる人で、メンタリティ的にもハングリーさや攻撃性よりストイックさ、一種の気高さを感じさせる。

本作は彼のクラシックの素養が、70年代初頭のニューソウルの機運とうまく重なり、バラエティに富んだアルバムに結実している。全体的に軽やかで優しいが、決して甘さに流れていない。

アルバムのハイライトは何といっても "Someday We'll All Be Free" で、これこそ音、歌詞ともに彼の美点が凝縮された曲である。

同時期に同じく最高傑作をものにしたマーヴィン・ゲイスティービー・ワンダーには残念ながら及ばないものの、ワタシは折に触れこのアルバムを聴き返すに違いない。精神的に不安定だったため1979年に自殺してしまったのが惜しまれる。

こういうのが不愉快なんですよ、はてなさん

先日追加されたアイコン表示設定の追加機能の「このエントリーを含むブックマーク」アイコンを自分のところにつけさせてもらったのだが、うまく機能してなかった。はてなダイアリーを日付表示段落アンカースタイルにしていたためである。

現在はこの問題は解決しているが、この件については香雪ジャーナルの3月2日3月6日の記述を読めば、経緯はほぼすべて分かるのでそちらを参照いただきたい。当方の感想も yukatti さんと同じである。

ishinaoさんからは、はてなの開発者は日付表示段落アンカースタイルを obsolete とみなしているからだろうという指摘をいただいた。実際その通りだと思う。それはそれで結構だ。しかし、はてなダイアリーが日付表示段落アンカーを現にサポートしており、無視できない数のユーザがそれを利用しているという事実がそうした認識や願望より先にこないとおかしい。

自身のサービスがサポートしている一部(というか二つに一つだけど)スタイルで機能しないサービスをリリースするなんてはなから理解できないし(最低でもこのモードでは動かないとはじめに断るべきだ)、現在まではてなダイアリー日記でこの件の告知がないということは、そもそも不具合だとみなしていないということだろう。ユーザはこのように開発者の意識を敏感に感じ取り、そして自分達が阻害されたと感じれば不愉快になるものだ。

個人的な話になるが、先週末はじめてゆっくり近藤さんにお話を伺う機会があったのだが、はてなが目指すものがワタシが予想していたのより遥かに高いものであるのが分かり驚くと同時に心動かされるものがあった。何より近藤さんという人のことが、また好きになった。ワタシ自身いくつかアイデアもいただいた。

その気持ちは今も変わらない。しかし以前書いた

最近のはてなの開発陣は、自分達の頭にある目標地点に突き進もうとするあまり、現状の機能性に(一応)満足しているユーザを置いてけぼりにしてやいないか。

というのをまた感じてしまった。今回はなお悪い。管理ツールからはてなダイアリーガイドへのリンクなど地道な努力もしているというのに残念である。

追記:この件については、はてなダイアリー日記において「日付別表示におけるはてなブックマークアイコンの不具合修正について」として報告されている。「本不具合は3月5日の午後、管理画面にはてなダイアリーガイドへのリンクを追加したのと同時に修正を行っておりましたが、その際に告知を行っておりませんでした。」とのことで、当方の「そもそも不具合だとみなしていないということだろう」というのは誤りでした。謹んで訂正します。

蝕まれる心、企業生き残りの代償

日経の専門家の眼の1コーナーなのだが、携帯用ソフト技術者という今一番ありがちな例に続き、部品メーカーの法務部課長さんの人生が狂わされておる。今回のほうが悲惨の度合いが強く、読んでいて小生もいろいろ思うところがあり、怒りと恐怖に震えた。

嗚呼、狂えるワールド。

iNTERNET magazine 2005年4月号

リニューアル第二号なのだが、「ケータイが熱い!」という特集にも関わらず、一読した印象は「静謐」とでも形容したくなるような感じで、リニューアル前のブログマガジン路線との落差にめまいを覚えるほどである。

ただ前号について書いたように、ワタシはこの路線が嫌いではない。冒頭の PUBLISHER'S NOTE のようなものをちゃんと書く編集長なんて最近ではなかなか見ないように思う。しかし、いきなり冒頭からロバート・カーン博士のインタビューとは、売り上げ的に大丈夫かいなと思うのも確かであるが。

ケータイ特集は、今のワタシの興味とずれるのでほぼスルーだったが、服部武上智大学理工学部教授による開発プラットフォームの話は参考になった。

あとNTTコミュニケーションズ常務取締役インタビューでは、デジタル放送におけるメタデータの突っ込んだ話と IPv6 に対する本気度を聞いてほしかった。

P2Pからウェブサービスやグリッドまで

先日、アメリカのブログ本状況を調べたついでに P2P 関連の書籍についても調べてみた。

すると『From P2P to Web Services and Grids: Peers in a Client/Server World』というなかなか面白そうなタイトルの書籍がひっかかったのだが、この本結構な値段がするんだよね。少なくとも275ページのペーパーバックにつく値段じゃあない。何か事情があるのだろうか。

著者の Ian J. Taylor のウェブサイトからこの本のサポートサイトに辿れるが、値段がべらぼうな理由までは分からなかった。

洋書の値段、ウェブの効用、そしてアフェリエイトサイトの害

しかし、Amazon ができて本当に洋書が入手しやすくなったものだ。Amazon.co.jp で買える1500円以上の本なら送料もかからない。個々の本の値段はともかく、Amazon がなければ未だに洋書に非常以上に高い金を払わされていたのではないか。

ウェブがもたらした恩恵は購入の容易性に留まらない。上で挙げた本がそうであるように、技術系の書籍なら著者のサイトがあったり、さらには著者(訳者)や出版社によるサポートページが設けられていたりして事前にその書籍についての情報を得られることが多い。

このようにウェブ、並びにウェブサービスの恩恵を得ているわけだが、一方で最近は Amazon アフェリエイト目的の自動生成されたウェブサイトが多くてうざい。特に困るのはマイナーな技術書の感想文を読んで購入するかどうか判断したいとき。書名で検索しても洋書、邦書問わずアフェリエイトサイトばかりが上位にくることがありうんざりすることが多い。ちゃんとしたカスタマレビューが載っている本ならまだよいのだけど、おかしなレビュアーもいるのでね。

ワタシ自身 Amazonアフェリエイトプログラムから収入を得ているわけで、こういうことを書くのは天に唾することかもしれない。ただ Blogless Google ではないが、検索結果から自動生成されたアフェリエイトサイトを省くことはできないかと思うことがあるのも確か。

三大ギタリストを知らなかった女王陛下

このニュースについては Moleskin さんがきれいに落しているが、結構意外に思った。モンティ・パイソンのCDボックスのブックレットにコメントを寄せているくらいなので少しはポップカルチャーに触れているという先入観があったし、クラプトンなぞチャリティーイベントでそのチャールズ皇太子と並ぶ機会もある一種の名士なわけで、名前ぐらいは知ってると思っていたが。

しかし、エリザベス女王とロックといったら何と言ってもスミスの "The Queen Is Dead"(同名アルバムに収録)だよな!

だから僕は宮殿に押し入ったんだ
スポンジと錆びたスパナを手に
女王は言った。「あら、あなたのことは存じておりますわ。あなたが歌えないということも」
僕は言った。「くだらない。僕がピアノを弾くのを聞いてくれなきゃ」

全盛期モリッシーの破壊的ユーモア全開な歌詞だが、次作にしてラストアルバムとなった『Strangeways Here We Come』の "Death of Disco Dancer" では実際に唯一のピアノ演奏を披露してファンを驚かせている。

3大ギタリストとストーンズ6番目のメンバー

それにしても「3大ギタリスト」と称されるエリック・クラプトンジェフ・ベック、そしてジミー・ペイジオバQ)が公の場に揃い踏みなんて極めて珍しいことで、何だかんだいって女王陛下ってのはエゲレス人にとって特別な存在なんかいなと思う。

この三人が同じステージで演奏したというと、実際はいろいろあるのだろうけど、1983年に開かれた ARMS コンサートぐらいしかワタシには思い出せない。

これは多発性脳脊髄硬化症(ARMS というのはその略)を患っていた元(スモール・)フェイセズのベーシスト、ロニー・レーンを支援するために開かれたもので、彼の人脈と人柄を反映した同世代ミュージシャンの豪華共演が実現したわけだが、3大ギタリスト揃い踏みには面白い経緯がある。

とある業界のパーティで、「ストーンズ6番目のメンバー」イアン・スチュアートが熱心にジェフ・ベックに出演を依頼したのだが、ベックの隣でその話を聞いていたジミー・ペイジは、思わず腹立たしげに口を挟んだ。

「誰も僕を誘ってくれないんだな。僕が出ると何かまずいことでもあるのかい」

イアン・スチュアートは慌てて言った。「もちろんそんなことはないよ。君も出てくれよ」

これは『レッド・ツェッペリン物語』に出てくる話だが、ジミー・ペイジの仲間内の信望の度合いが分かる。そうしたところも含め、ワタシはこの話もジミーも大好きだ。

でも、ジミーがむっとしたのも分かる気はする。外部のミュージシャンをレコーディングに介在させなかったツェッペリンにおいて、イアン・スチュワートはその数少ない例外だからだ。例えば、彼らの代表曲である "Rock And Roll"(『Led Zeppelin IV』に収録)でブギピアノを弾いているのが彼だし、『Physical Graffiti』にはズバリ "Boogie with Stu" という曲がある。

イアン・スチュワートは、デビュー時に「ルックスが他のメンバーと合わない」という理由でストーンズのメンバーから外され、しかしレコーディング、ツアーに関わり続け、前述の通り「ストーンズ6番目のメンバー」と呼ばれた人である。ストーンズのツアーは彼がゴルフができるようホテルが選ばれたという逸話もあるが、自分の立場をどのように考えていたのだろうか。

ARMS コンサートで支援される側だったロニー・レーンが1997年まで生きたのに対し、イアン・スチュワートが1985年に心臓発作でこの世を去ったのは皮肉である。彼の葬儀にはストーンズのメンバー全員に加え、クラプトン、ベックが参列している。

あ、ジミーさんは……

[YAMDAS Projectトップページ]


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
YAMDAS現更新履歴のテキストは、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

Copyright (c) 2003-2023 yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)