言わずとしれたセキュリティ研究家である Bruce Schneier による論説なのだが、この邦題はおかしい。
というのも原文のタイトルは Anonymity Won’t Kill the Internet で、つまり、「匿名性はインターネットを殺さない」である。邦題のようなどっちつかずの一般論を述べたのではなく、彼が常にそうであるようにはっきりとした attitude を表明した文章である。長ったらしいタイトルになってしまうだけならまだしも、お前らが勝手に穏便に書き換えてどうすんだよ、HotWired。
本文における「問題とすべきは、匿名性ではなく説明責任なのだ」という主張は、この文章でも引き合いに出される最近の Wikipedia を巡る問題に当てはめても出発点として妥当なものだと思う。
ただ現在の Wikipedia のユーザ登録は緩すぎるので、せめてメールアドレス登録ぐらいまでは担保すべきだと思うが、少なくとも、
歴史的に説明責任は身元情報に結び付けられてきたが、そうしなければならない理由はない。
というインターネット時代のまっとうな認識が広がってほしい。
さて、これはこれまで何回も書いてきたことだが、Bruce Schneier の『Beyond Fear』(asin:0387026207)の邦訳はやはり出ないのだろうか。となると、『暗号の秘密とウソ』(の第二刷。第一刷は誤植が多し)がもっとも広く読まれる彼の著作ということになるか。
- 作者: Bruce Schneier,ブルース・シュナイアー,山形浩生
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2001/10/05
- メディア: 単行本
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