これの元となった Harper's Magazine の記事は、ワタシもブログで取り上げようと準備していたが、先を越されてしまった。
Spotify の人気プレイリストに存在しない偽のアーティスト、「ゴースト・アーティスト」の曲が入っているという、数年前まで陰謀論扱いされていた、しかし本当の話について音楽ジャーナリストのリズ・ペリーが書いている。
GIGAZINE のエントリで省かれている話では、リズ・ペリーが PFC にコンテンツを供給するジャズミュージシャンに取材して得た、彼らの多くも報酬は前金で楽曲の権利は得られず、小銭稼ぎにしかならないという話がリアルだった。つまりは Spotify 以外誰も得していないんですね。
Spotify は PFC での楽曲制作に AI を活用するようになるだろうとリズ・ペリーは記事を締めくくっているが、この記事内容を含む、来年3月に刊行予定の Mood Machine は、間違いなく Spotify の「メタクソ化(Enshittification)」を取材した一線級の資料になるだろう。
Spotify に取材した本って『Spotify 新しいコンテンツ王国の誕生』(asin:4478108757)くらいしかないので、これは邦訳が期待される本である。
で、ワタシはこの Harper's Magazine の記事をコリイ・ドクトロウの Pluralistic で知ったわけだが、リズ・ペリーは彼が共著した『チョークポイント資本主義』で取材を受けている。
その内容については「ミュージシャンが報われないのはSpotifyが買い叩いてるせい? それともレコードレーベルが強欲だから?」を読んでくださいな。
さて、「反権力と脱メタクソ化への道」における記述によると、コリイ・ドクトロウは「『Enshittification』という本の執筆も、もう大詰めを迎えている」とのことだったが、気がつくと Amazon にページができている。
現時点での刊行日は来年10月なのでまだ先の話だが、この言葉の発明者自身による渾身の作になるはずだ。この言葉をアメリカ方言学会は2023年のワード・オブ・ザ・イヤーに、オーストラリアの国定辞書であるマッコーリー辞書が2024年の代表語に選出しているが、現在のインターネットを語る上でこの言葉は避けられない。どうも『チョークポイント資本主義』は邦訳が出ないようなので、再来年になるだろうが、『Enshittification』は絶対どこか邦訳を出してほしい。