この文章を読んで、本題とは別のところではっとしたところがある。
【生き急ぐ】一見聴き慣れた言葉のように聞こえるが、実はこの曲から生まれた松本による“新しい言葉”だったという。
「“死に急ぐ”という日本語はあるが“生き急ぐ”というのは、あまり聞いたことがないから僕の造語のような気がしますね。」
スローなブギにしてくれ〜気弱で強がりなハードボイルドの世界観を見事に仕立て上げた南佳孝と松本隆の手腕〜|TAP the NEWS|TAP the POP
「生き急ぐ」という言葉は、松本隆の造語らしい。
それで思い出した話がある。昔、遠藤周作がエッセイで、「最近「生き様」という言葉がメディアで使われるが、そんな日本語はない。「死に様」という言葉はあるが、「生き様」なんて言葉は辞書にはない」みたいな苦言を呈していたことである。
それを読んで、えーっ、と驚き国語辞典を調べてみたが、(今はどうか知らないが、その当時は)確かに辞書にはなかった。
しかし、それで遠藤周作に感心したかというとまったく逆で、そういう言葉への想像力が足らないところが彼のダメなところだと思った。大好きな作家の悪口は書きたくないが。
「死に様」という言葉があるなら、(その言葉のポジティブ/ネガティブな意味合いはどうであれ)「生き様」という言葉があってもよかろう。松本隆のように「生き急ぐ」という言葉を造るのが作家の仕事ではないのか。その造語が大衆の無意識のトレンドに合致していれば、「生き急ぐ」という言葉がそうであるように、人口に膾炙するはずだ。
果たして、最初に「生き様」という言葉を使ったのは誰だろう。
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