英国を代表する名優にして、昨年俳優業からの引退を表明したマイケル・ケインの最後の主演作ということで、彼を見届けるべく観に行った。
本作の主人公はDデイの70周年記念の行事に参加するためノルマンディを目指して老人ホームを抜け出た老人であり、マイケル・ケインにぴったりな作品なのは間違いない。
実話を基にした映画ということで、地元の警官が SNS で拡散した「The Great Escaper」というフレーズが人々の好奇心を惹いたわけだが、言っちゃなんだが、大してドラマチックな話になりようがない。特筆すべき作品と言うつもりはない。しかし、それは問題ではないのだ。
主人公と久方ぶりの共演となる妻役のグレンダ・ジャクソンをはじめ、介護施設のケアワーカーなど脇を固める人たちがよいのだけど、やはり長年の夫婦でも長年お互い触れることのできない領域があるという普遍性のある主題を表現している。
なんといっても主人公がその死を目の前で見ることになってしまった戦友の墓の前で嘆く痛切な言葉、そして帰国した主人公が妻に吐き捨てるように「感動ストーリー」な騒ぎを切り捨てる言葉、それがすべてだと思う。それを聞けただけでよかった。
