誰でも自由に利用できる世界地図を作るプロジェクトである OpenStreetMap についてはこのブログでも何度も取り上げている。例えば、昨年 OpenStreetMap が2018年のフリーソフトウェア財団の FSF Awards を受賞したことを取り上げたが、派手なニュースが続くわけでもなし、正直プロジェクトは停滞してないかと思うところがあった。
こうやってプロジェクトの現状を紹介する文章はありがたい。プロジェクトの登録ユーザ数はずっと着実に伸びているし、企業による利用も進んでいる。名前が挙がるのは Facebook、Apple、Amazon、そしてマイクロソフト――要はいわゆる GAFAM マイナス Google というわけだが、これらの企業は財政的な援助だけでなく、地理データ編集者としての協力も大きなものになっている。
これは Linux が企業内で利用されるにつれて、業務でその開発を行う開発者が増えていった話との類似を感じる。
Jennings Anderson の講演 Curious Cases of Corporations in OpenStreetMap によると、Apple による編集の伸びがすごい(続いて Kaart と Amazon か)。
そのように企業による編集が増えると OpenStreetMap コミュニティにおいて文化衝突も起こっているようだが、そのあたりもオープンソースにおける企業開発者の過去の事例での知見が活かせるのではないか。この文章では、結論として OpenStreetMap で起こっていることはコモンズの悲劇の反対で、参加者がそれぞれの私利を追求しても、資源を消耗することなくウィンウィンの関係になっているとまとめているが、そうあってほしいですね。
こちらは Google Maps がいかにお行儀が悪く、ユーザのプライバシーを尊重しないキモいアプリかという話で、具体的にはユーザの検索履歴を要求する、それを拒むユーザには機能を制限するなど、不必要にユーザの情報を握ろうとする点が指摘されている。
オンライン地図分野で主導権を握る Google の横暴を止めるには、OpenStreetMap がそれなりに現実的な代替の選択肢でないといけない。
そう簡単に Google Maps の牙城を崩せるものではないが、少なくとも OpenStreetMap プロジェクトがある程度の財政的、人的リソースの余裕があると分かったのは良かった。
日本で OpenStreetMap に興味を持った人は、例えば、先月開催された State of the Map Japan 2020 のサイトで公開されている動画を見てみてはいかがだろうか。
ワタシの知った人では三浦広志さんが OSM Wiki の紹介をしているが、マッピングだけでなく翻訳でもプロジェクトに貢献できるわけだ。
ネタ元は Slashdot。