2017年のノーベル経済学賞受賞者であるリチャード・セイラー教授がインタビューを受けているが、彼の代表作『実践 行動経済学』の「完全版」が出るんですな。『実践 行動経済学』は要は「ナッジ」なわけで、今の目で見ればよくない邦題に思えるが、その当時「ナッジ」というなじみのなかった単語を忌避した気持ちも分からんわけではなく、今回『NUDGE 実践 行動経済学 完全版』として書名にちゃんと原題が入ったのはよいことかと思う(個人的には、イーライ・パリサーの『閉じこもるインターネット』が『フィルターバブル』として文庫化された件を思い出す)。
そういえば、昨年の「行動経済学の死」騒動の際、「ナッジ」も過大評価されてるという話もあったと記憶するが、「完全版」にはそのあたりに対する反論もあるのだろうか?
さて、このインタビューに吉良貴之氏がかみついている。
スラッジを単なる無駄のように述べていますが、いや、ナッジ/スラッジは aspects の問題だってご自分の著書で書いてるじゃないですか、という指摘を今度出るサンスティーン『スラッジ』(早川書房、2023年1月)の解説「ナッジ/スラッジは見え方次第」で書きました。https://t.co/3uc6oYSfJ4
— 吉良貴之|Kira, T. 🗼 (@tkira26) December 20, 2022
思わず笑ってしまったのだが、ちょうどよい具合に『スラッジ──悪い行動経済学』という本が出るんですな。しかも、著者は『NUDGE 実践 行動経済学 完全版』の共著者でもあるキャス・サンスティーンとのこと。
正直、「マッチポンプ」という失礼な言葉が頭に浮かぶが、さすがは多作なサンスティーン教授、ちゃんと「スラッジ」を中心的に扱う本を書くところが商売上手である。
いや、商売上手というなら、日経BPが『NUDGE 実践 行動経済学 完全版』を出す少し後に『スラッジ』を出してくる早川書房かもしれない。