キャス・サンスティーン『入門・行動科学と公共政策』を取り上げたとき、『NOISE』について「来年あたり邦訳が出るに決まっている」と書いたが、2021年中に出るとは! さすが早川書房、仕事が早い。
水野祐さんが書くように「認知心理学、行動経済学、法学のスターが集結」した本である。これは売れるに違いない。
しかし……2021年にカーネマンやサンスティーンの新作の邦訳を迎えるにあたり、なんというかいささか気まずい感じを禁じ得ないというのも正直なところである。
今年、「行動経済学の死」騒動があったためだ。
最初に燃えたのはダン・アリエリーで、彼の『予想どおりに不合理』、『ずる』の2冊を読んで感銘を受けていたワタシにしてもショックが大きかった(まさか『ずる』を書くにあたりズルをやってたとしたら、それはなんというか……)。
そして、その延焼が『ファスト&スロー』が私的オールマイベストの1冊であるカーネマンの仕事や、サンスティーンの代名詞的な「ナッジ」にも及ぶ話を聞き、なんとも困惑させられた。
まぁ、ワタシの困惑などどうでもよいのだが、行動経済学の成果を持ち上げるかわりに一部の学問について切り捨てるような主張を行ってきた論者(具体名は挙げませんが)はちょっと困ったことになったのではないかしら。
そうしてみると、早川書房による「行動経済学はついにここまできた!」という煽り文句も勝手に皮肉に思えてくるくらいだし、というかこのエントリで名前を出した本はすべて早川書房から出ているのだが、そういう穿った見方を置いておき、新刊を評価すべきなんだろう。