実は「TESCREALふたたび:AGIが約束するユートピアはSF脳のディストピアなのか?」を書いていたときに、プリンストン大学のルハ・ベンジャミン教授の「ケンドリック・ラマーやヤシーン・ベイのヒット曲みたいにこの論文をずっと待ってた!」という反応を取り上げようと思ったのだが、ルハ・ベンジャミン、日本では知名度ないしな、と諦めていた。
I’ve been waiting for this paper to drop like yall wait for the latest Kendrick or Bey hit! On eugenics and the promise of utopia through artificial general intelligence by @timnitGebru + @xriskology. <> https://t.co/MdGWH5OkLt pic.twitter.com/492eBzOJYq
— Ruha Benjamin (@ruha9) April 15, 2024
その彼女の新刊 Imagination: A Manifesto(表紙デザインがインパクトある……)でやはり TESCREAL を批判していたんだ。
著者がとくに警鐘を鳴らすのは、技術の進歩による問題解決を目指すテクノユートピア主義や、はるか未来の人類のためと称していまここにいる人たちを見殺しにする長期主義倫理など、いわゆるTESCREALと呼ばれる思想群。これらの思想が形を変えた新優生主義を抱えたイマジネーションであることを指摘する本書は、短いながらテクノロジー社会論と人種主義を専門とする著者ならではの力作。これからも注目していきたい論者の一人。
Ruha Benjamin著「Imagination: A Manifesto」 – 読書記録。 by @emigrl
やはり「テクノロジーと人権」についてちゃんと書かれた本が翻訳されないといけないと思うのだが、彼女の本の邦訳は難しいんでしょうね。
そういえばルハ・ベンジャミンといえば、ガザにおけるイスラエルの大量虐殺と親パレスチナ派の学生への弾圧を非難していたが、先月末には学生14人とともにプリンストン大学のクリオ・ホールを占拠したというのに驚かされた。行動派ですな。