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ジョン・レノン 失われた週末

柳下毅一郎さんに啓示を受けて(おおげさ)観ることした映画である。

ジョン・レノンの70年代において、オノ・ヨーコと別居していた期間は、この映画のタイトルにもあるように「失われた週末」と呼ばれ、酒浸りの非常に荒んだ生活を送っており、音楽的な成果も乏しい時期という固定観念がワタシの中にもあった。

本作は、その時期にジョンと生活をともにしていたメイ・パン本人の証言を中心に描くドキュメンタリーである。

この時期のジョン・レノンは、オノ・ヨーコというくびきから解き放たれ、コラボレーションを活発化させている。エルトン・ジョンと共演した「真夜中を突っ走れ」は彼にとって初の全米1位シングルとなり、デヴィッド・ボウイと共作した「フェイム」はボウイにとって最初の全米1位シングルとなり、二ルソンの『Pussy Cats』をプロデュースし、自身も『Walls and Bridges』(彼の生前最後の全米1位アルバム)と『Rock 'N' Roll』という2枚のアルバムをものにしている。

正直、『Walls and Bridges』も『Rock 'N' Roll』も評価が高いとは言えないが、特に前者については、「失われた週末」の時期のアルバムという印象が先入観になっているところもあろう。発表から半世紀のタイミングで、その死後忌々しくも「聖人」視されることとなったジョン・レノンの、そのイメージに合わない『Walls and Bridges』こそ再評価が必要なのではないか。

そして、この時期ジョンはポール・マッカートニーとの交友も復活し、シンシア・レノンとの離婚後、(オノ・ヨーコが間に入るため)コミュニケーションがとれなくなっていたジュリアン・レノンとも親子の時間を過ごせていた話は心が和むものがある。それを実現させたメイ・パンに感謝したくなる。

本作が始まったとき、あ、この映画はビートルズはもちろん、もしかしてジョンの曲すらかからないのか? と身構えたが、さすがにジョンの曲は問題なかった。このような映画が実現したのは、オノ・ヨーコが大概高齢になり、コントロールが緩くなったところもあろう。

本作でジョン・レノンの解放された姿を見れたように思うが、結局のところ、この人の身勝手さ改めて感じたというのが正直なところ。ワタシは表現者とその表現は分けるべき主義の強硬な支持者なので、ジョン・レノンの作った音楽に対する愛は基本的に変わらない。ただ上に書いたように、自分の中での評価のし直しは必要だと思った。

そして、メイ・パンについて好奇の視点からでない、本人の証言を中心にした本作のような映画ができたことは、彼女の名誉のためにもよかったと思う。

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