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利用者が増えることでサポートの負担が増す話の2024年版の主役はAIプログラミングツール

medium.com

「顧客が AI で生成したコードを修正するのにウンザリ」と題されたブログエントリだが、「これはアンチ AI 投稿じゃないからな――Copilot は素晴らしいし、オイラもいつも使ってる」という断り書きから始まる。

この方は、今年のはじめに個人的な利用のため、そして Rust プログラミングの経験を積むために、暗号通貨取引とデータ収集ツールをいくつか作った。そのうち、多くの人が同様のツールを求めており、そのためにお金を払ってもよいと思っているのに気づく。そこで、API エンドポイントをいくつか設定し、無料でデータにアクセスさせる代わりに、少額の手数料で取引を行えるようにした。

自分が作ったソフトウェアでお金を払ってもらうのが初めてだったので、これはクールな経験だった。機能のアナウンスやサポートのために Telegram チャンネルを立ち上げ、最初はうまくいった。が、利用者が増えるにつれ、サポートに時間がとられるようになった。けど、それ自体はよくある話なので驚きではない。問題は、この方が受け取るサポート依頼の「質」だった。

どういうことか?

この方は API エンドポイントについてちゃんとドキュメントを書いており、POST リクエストの送り方が分かれば、どんなプログラミング言語でも問題なく使えるはずだった。でも、実際にサポートチャンネルに「僕の取引ボットが動かないんです!」と助けを求める利用者のコードを見ると、ほとんど問題ないのに、一目おかしい間違いがある。多くの場合、存在しないエンドポイントにアクセスしようとしていたり、存在しない API レスポンスからプロパティを読み取ろうとしている。

つまり、プログラミング経験がほとんどないと思しき顧客は生成 AI を使ってコードを作成したが、そのコードにハルシネーションが紛れ込んでしまってるというわけ。簡単なスクリプトならハルシネーションを修正してあげるのだけど、多くの顧客は複雑なアプリケーションを想定しており、そうなるとプロの開発者を雇ってくださいと言わざるをえない。ひどいのになると、最初は単純なのでハルシネーションを直してあげると、どんどん顧客が期待するロジックが複雑になり、こっちが無制限の無料サポートをやってくれると期待されてしまうこともあった。

ここまでの話も SaaS ビジネスのサポートではよくある話なのだろうが、AI プログラミングツールがこの問題を悪化させているというのがこの方の見解である。顧客の課題解決を支援すること自体はとてもやりがいのあることだ。が、顧客に基本的な課題解決能力がなく、ソフトウェアエンジニアリングを AI に委ねてしまうと、AI が生み出すバグを修正する開発者が必要となり、その役目を自分が負わされるのは真っ平ということだ。

この方も何度も書いているように、利用者が増えることでサポートの負担が増す話自体は昔からずっとあるものだけど、その主役というか問題の源が AI プログラミングツールというところが2024年なんでしょうな。

あと余談ながら、サポートプラットフォームが Telegram というのも今どきなんかねぇ。そういえば Telegram というと、CEO のパーヴェル・ドゥーロフがフランスで逮捕されちゃった

ネタ元は Hacker News

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