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ポスト・オープンソース時代には契約がライセンスにとってかわる?

www.linux-magazine.com

長年、フリーソフトウェアオープンソースソフトウェア(以下、FOSS)を追っかけてきたジャーナリストの Bruce Byfield の文章である。

FOSS はプロプライエタリなソフトウェアのオルタナティブを作る取り組みとして始まったが、当初 FOSS 開発者はプロプライエタリ・ソフトウェアの不信感を抱き、一方で企業は FOSS を否定してきた。

今では FOSS は、先駆者たちが想像した以上の成功を収めたが、未だ完全に自由なソフトウェアを夢見る開発者は少数で、今ではプロプライエタリ・ソフトウェアとの共存を受け入れることに重点が置かれるようになっている。

その例として Byfield は、標準インストールにフリーでないファームウェアを含むことを票決した Debian、独自のドライバやゲームアプリを含めた Fedora ベースの Nobara Linux ディストリビューションの人気、GNU GPL に例外条項を加えた SCM ライセンス、そして Red Hat Enterprise Linux (RHEL) へのソースコードへのアクセス制限を挙げている。

つまり、FOSS それ自体が目的ではなくなっており、FOSS コミュニティの大部分は現実的になっている。プロプライエタリ・ソフトウェアをすべて置き換えるのではなく、FOSS がプロプライエタリ・ソフトウェアやビジネス慣行とどう折り合っていけるかに重点が移っている。

そして、FOSS の理念は弱体化しているのかもしれないと Byfield は書く。2006年から2007年にかけての GNU GPLv3 の議論をしていた頃がフリーソフトウェア財団(FSF)の権威のピークであり、その後リチャード・ストールマンが解任されたし(後に理事に復帰)、Linux Foundation は元から企業重視で、FSF の代わりにはなれない。

www.theregister.com

Open Source InitiativeOSI)の共同創始者のブルース・ペレンスは、「ポスト・オープンソース時代」が来るという見立てで、彼によれば FOSS ライセンスはもはや本来の目的を果たしておらず、一般ユーザの利益にもなってないという。

オープンソースはまったく普通の人の役に立っていない。大抵の場合、彼らはプロプライエタリなソフトウェア企業のシステムを通してオープンソースを利用する。Apple iOSGoogle Android のどちらもインフラはオープンソースを利用しているが、アプリの大半はプロプライエタリだ。普通の人はオープンソースについて知らないし、我々が推進する自由についても知らない。実際、オープンソースは今日では、普通の人を監視したり、抑圧するためにさえ使われている。

そこでペレンスは、ライセンスを契約に置き換えるべきと提案する。企業が FOSS を使用して得る利益の対価を支払わせ、その支払いは FOSS の開発資金に充てられるわけですね。個人や非営利団体はこれまで通り無料で FOSS を使用できる。

ペレンスは、今年の3月に Post-Open License の最初のドラフトを公開している(本文執筆時点で、8月に更新されたバージョン0.07が最新)。

ペレンスの提案が法律的に問題ないかはまだ不確かだが、対価の徴収が早期に実現することはないだろう。現在の FOSS 利用は広く多様なため、その黎明期のようにはいかない。草案が公開されて5カ月間、ほとんどそれが注目されていないのも、参加を促すのがいかに難しいかを示しているかもしれないと Byfield は書くが、そうよね。恥ずかしながらワタシもこの記事読んで初めて知ったし。

ワタシも昨年末「オープンソースの失われた10年と「オープンソースAI」の行方」という文章を書いている。そこでもオープンソース・ライセンスが、特にクラウドとモバイルの分野で有効性を失っているのではないかという問題意識について取り上げている。

だからといって、「オープンソースのライセンス戦争は終わった」というマット・アセイのポジショントークには賛同しないのだけど、ブルース・ペレンスがそういう提案をしているのは重い。記事は、「ポスト・オープン契約が唯一の解決策ではないにしろ、少なくとも、一朝一夕で解決しそうもない問題への対処に向けたスタートにはなるだろう」と締めている。

ネタ元は Slashdot

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