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UNIX USER 2004年1月号「Webダーウィニズム」

何と UNIX USERWiki と blog について文章を依頼された。タイトルは編集者が付けたものであり、これを当方の文章を読む前から決めていたものだと推測する。つまり、最初から Wiki や blog を「新しいもの」であると位置付け、その可能性について書いてほしかったのだと思う。

当方のこれまでの文章を見ていただければ分かることだが、上の見方について当方は全面的には同意するものではない。結果、当方の文章には編集部による強力なコントロールが働いている。編集者からは、何か言われたら編集者から勝手に変えられたと言っていいですよと言ってもらったが、名前を出して書く以上、そういうわけにはいかないし、そうするつもりもない。文章に何かおかしなところがあれば、それは著者の責任である。

今回これまでと少し違うスタンスになる文章を書いたのは、これは以前にも書いたことであるが、同じ文章を使いまわして人様からお金をもらうことはしたくないからである。もちろん同じ人間が同じ題材について書くのだから、毎回まったく別のことを書くのは不可能だが、今回は「僕だってこういう技術 driven な文章だって書けるんだよ(でもそれより先に来るものがある)」ということを示したかったというのもあった。

が、文章の出来としては凡庸な概論記事レベルである。あまり誉められたものではない。やはりスケジュール的に無理があったかもしれない。原稿依頼があった日に『ウェブログ・ハンドブック』の進行状況を知り、反射的にオーケーしたのだが、それでもやはり両方の作業が同時進行になり、少なくとも HotWired 原稿のように全身全霊を尽くした仕事にはならなかった。言っておくが当方は才能が乏しいので、片手間に文章を書き飛ばすような芸当はできない。この仕事にしろ相当なリソースを割いたのだが、正直自分の文章がどう料理されようがあまり構わなかったところはある。

しかし、これは悪いことばかりではない。当方は自分の仕事に対する執着が強すぎるため、担当いただいた編集者に結果的に不愉快な思いを必ずといっていいほどさせてしまう人格破綻者なのであるが(もちろん当方の仕事の出来が至らない場合もある)、今回は終始編集者と良好な関係の元で仕事ができたと思う。編集者の方にはうっかり「ショッキング」という表現を使ってしまったが、以前ならそのような編集が入ったらかなり葛藤を感じただろう。『ウェブログ・ハンドブック』の訳者あとがきで総括を一通り書き尽くしたという気持ちだったのも大きいが、編集者自身フリーソフトウェアを公開されている、今回執筆した分野についても造詣の深い方だったというのも大きい。何はともあれ、氏に深く感謝します。

そして今回の文章を書くうちに確信したことがある。それはやはり、Wiki にしろ blog にしろ「新規性」というより(もちろんそれを感じる人もいるだろう)、「ウェブというメディアの本質に則ったもの」であるということ。例えば blog は、個人サイトにもニュースサイトにも議論サイトにも採用可能な単純強力なフォーマットこそが肝なのである。ツールの付加機能は、あくまでそのフォーマットを補強するためのものであり、本質ではない。もちろんそうした機能が導入される必然性はあるのだろうから、松永さんが書くようにスタンドアローンとまでは思わないが、少なくとも blog のフォーマット、並びにそれが達成するものを阻害するものであってはならないという判断基準にはなるだろう。

Wiki には、特にその「本質性」が言えると思う。「編集可能なウェブページ」というのにはじめ面食らったが、考えてみれば何もおかしなことではない。江渡さんの表現を借りれば、「WikiはWebと同じ部品からできている」のだ。その「本質性」とは……と書くと長くなるし、もう十分書いたので今日はここらへんで。

さて、江渡さんにはパクりの許可を得たので、今後上の文句をさも自分の言葉のように使うかもしれないのであしからず(おいおい!)。

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