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ベンジャミン・バトン 数奇な人生

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 特別版(2枚組) [DVD]

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2009年初めての映画館での映画鑑賞。

先日のアカデミー賞では主要部門の受賞は逃したものの、13部門のノミネートとのことで、本当にデヴィッド・フィンチャーの映画かよ、ひょっとして「感動の大河ドラマ」狙いの映画だったらどうしようという危惧があった。前作『ゾディアック』は未見だが、その前の『パニック・ルーム』が駄作だったので、少しフィンチャーを見損なっていた。

それがどうだ。2時間半を優に超える上映時間をまったく負担に感じさせない優れた映画だった。

ワタシはかつて、ブラッド・ピットはもっとヘタレな役をやるべきと書いたことがあって、80歳の五体不満足な身体で生まれ、結局は最愛の女性ともすれちがう運命にある主人公役は、そうした意味で成功しているのではないか。

本作について、『フォレスト・ガンプ』と比較している映画評をいくつか見かけた。まぁ、一般受けするのはあっちなんだろう。でも、ワタシは断然本作のほうが好きだ。

そういえば『フォレスト・ガンプ』では、「人生はチョコレート箱のようなもの。開けてみるまで何が入っているかわからない」というガンプの母親の言葉が名言のように扱われていて、ワタシには少し謎だった。

だって、チョコレート箱に入っているのは大方チョコレートじゃん。

それに即して言えば、本作は F・スコット・フィッツジェラルドの短編のトリッキーな設定だけを借りて、「チョコレート箱に入っているのはチョコレートだけ」というのを示し続ける映画とも言える。

それは本作において何度か出てくる表現を借りれば、「はらわたが煮えくりかえる思いで、運命の女神を呪いたくなっても、お迎えが来たら行くしかない」ということで、つまりは人間に永遠は与えられず、人間は皆生きそして必ず死ぬということ。

本作において、主人公が感情を激する場面はほぼ皆無で、容姿と感情のアンバランスさを象徴するように常にいささか困惑した表情で、母親、シェイクスピア好き、泳ぐ人、アーティスト、ボタン職人、ダンサーの生と死を見つけ続ける。

映像的には、ブラッド・ピットケイト・ブランシェットに相当に CG 処理を行なっているのだろうが、本作の演出同様その扱いも抑制が効いていて好ましかった。

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