金銭的苦境が噂され、なんでそんな作品に出演するかという時期が続いたニコラス・ケイジだが、2020年代に入ってからは、『PIG/ピッグ』でキャリア最高の演技と絶賛され(未見なんだよな)、『マッシブ・タレント』で自己のパブリックイメージを見事パロディ化し(Netflix で観た)、そして本作と好調が続いており、彼のファンとして嬉しい限りである。
『セブン・サイコパス』がクリストファー・ウォーケン版『グラン・トリノ』という意味で、本作はニコラス・ケイジ版『TAR/ター』である、と書くと怒られるだろうか?
なぜかケイジ演じる主人公が多くの人の夢に出てくるようになって時の人となり、しかし、それが暗転してしまう展開となるわけだが、キャンセルカルチャーの暗喩なのは間違いないでしょう。
理不尽な状況の描き方が、本作のプロデューサーがアリ・アスターと聞いて納得なのだが、本作は2時間未満でかっちり作られており、クソ長い『ボーはおそれている』なんかより良かった、と書くとまた怒られそうだが。
本作はまさかのトーキング・ヘッズ映画なのだが、クライマックスで笑いだしたのが、ワタシ以外では同じ列にいた女性だけで、果たして他の客が理解してたかは不明だが、エンドロールであの曲が流れ出したとき、不覚にも少し泣いてしまった。理不尽さを描く本作の結末が、苦くも心温まる着地点を見出していたからだろう。ニコラス・ケイジ、よくやった!
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