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オーソン・ウェルズの映画が観たい(のに観れない!)

現在死の床にあるらしいデニス・ホッパーは、かつてこのように語っている(CUT 1999年8月号)。

アメリカン・フィルム・インスティテュートによると、『地獄の黙示録』は"偉大な映画トップ100"に入る作品だそうだよ。『ジャイアンツ』と『理由なき反抗』、それに『イージーライダー』も入ってるんだ。だから、おれは偉大な映画100本中4本に出演したってわけだ。ちなみに、1位は『市民ケーン』だそうだ。それに関しちゃ、なんの文句もないね。

「それに関しちゃ、なんの文句もない」というのは多くの映画人が思うことだろう。『市民ケーン』はそれくらい素晴らしい映画で、ワタシ自身、一番優れた映画は何かと直球で問われたら、かなり迷うと思うがやはり『市民ケーン』を挙げると思う。20代半ばでこれだけの映画を作り上げたことに戦慄を覚えずにいられない。

しかし、ウェルズのその後のキャリアが栄光に満ちたものでなく、終生映画を作るための金策に苦労したことはよく知られている。

それによる権利関係の問題か、彼の『市民ケーン』以外の映画を観たいと思っても、DVD 化されてなかったり、されていてもとっくに絶盤状態だったりするものが多いのだ。

大体、Amazon で彼の名前を検索すると、下のように聞き返される始末で、おい、ふざけんなよ Amazon

気を取り直して彼の主な監督作と、その DVD 化、Amazon での入手可能性をまとめておく。

市民ケーン(1941)

市民ケーン [DVD] FRT-006

市民ケーン [DVD] FRT-006

前述の通りいわずと知れた映画史上に残る傑作で、ウェルズ自身この映画がそうなる自信があったろう。そして、その映画の最大のポイントに「バラのつぼみ」という名前をつける茶目っ気、悪戯心が彼らしいと思う。

アカデミー賞脚本賞受賞(というか、これしか取れなかった)。

さすがに本作は DVD の新品を入手可能。

偉大なるアンバーソン家の人々(1942)

偉大なるアンバーソン家の人々 [DVD]

偉大なるアンバーソン家の人々 [DVD]

19世紀後半から20世紀初頭のアメリカの地方都市を舞台に社会と経済の変化に翻弄され没落する旧家を描いたドラマ。

DVD は新品を入手可能だが、残念なことに映画会社により切り刻まれた90分弱の短縮版である。131分の完全版の DVD 化は実現しないのだろうか。

オーソン・ウェルズ In ストレンジャー(1946)

日本未公開の作品だが、比較的最近 DVD 化されており、現在も入手可能。

ウェルズがナチスの残党、名優エドワード・G・ロビンソンがそれを追う戦犯聴聞会委員長を演じている。

上海から来た女(1947)

上海から来た女 [DVD]

上海から来た女 [DVD]

二番目の妻であるリタ・ヘイワースとの共演作であるフィルム・ノワールだが、この映画も撮影はトラブル続きで、完成を巡り映画会社ともめてしまう。ウディ・アレン『マンハッタン殺人ミステリー』のクライマックスでズバリ引用されていたっけ。

現時点で Amazon に DVD の新品在庫はない。

マクベス(1948)

このあたりから映画制作の金策に追われ、映画制作の舞台をヨーロッパに移すようになる。DVD 化はされていない。

オセロ(1952)

前作に続くシェイクスピア劇。カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作(当時はグランプリが最高賞)なのに DVD 化されていない!

秘められた過去(1955)

フィルムノワール版『市民ケーン』という趣のスリラー映画(らしい)。日本未公開作で、本作も DVD 化されていない。

黒い罠(1958)

本作は久しぶりにハリウッドで撮った映画だが、これは主演のチャールトン・へストンの推薦があったため。

冒頭の長回しはすごいは、ヘンリー・マンシーニが音楽てがけてるは、マレーネ・ディートリッヒは出てるは、フィルムノワールの傑作なのに、本作も映画会社により切り刻まれ、失敗作の烙印をおされてしまう。

現在 DVD 化されているのはウェルズの意図に基づいた修復版で、これは1998年度のニューヨーク映画批評家協会賞の特別賞を受賞している。

現時点で Amazon に DVD の新品在庫はないが、再発が多いので入手は容易。

審判(1963)

カフカの代表作の映画化で、主人公のジョゼフ・Kをアンソニー・パーキンスが演じている。

本作も『黒い罠』同様、現時点で Amazon に DVD の新品在庫はないが、再発が多いので入手は容易。

フォルスタッフ(1966)

本作もシェイクスピア劇で、カンヌ国際映画祭で国際批評家連合賞、フランス映画高等技術委員会賞、20周年記念賞を受けた後期の代表作なのに DVD 化されていない!

フェイク(1974)

オーソン・ウェルズのフェイク [DVD]

オーソン・ウェルズのフェイク [DVD]

最後の監督作品が贋作をテーマにした映画というのが、『火星人襲来』のラジオドラマで一躍有名となったかぶき者ウェルズらしいのかもしれない。

Amazon に DVD の新品在庫はない。マーケットプレイスでとんでもない値段がついている。

* * * * *

なんとも寂しい限りである。生誕100年となる5年後までを目処に彼の全作品が DVD なり Bluray で観れるようにならんものかな。

彼の映画を観たことない人には、『市民ケーン』と、短い出番ながらすべてをもっていってしまう、これもまた映画史上に残る傑作『第三の男』がセットになった999円シリーズがもっともお得なのかな。

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