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レディ・プレイヤー1

中年オタク接待映画という声も聞いていた。実際、オープニングのヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」に始まる80年代文化の肯定はなんだかなというところもあるのだが、それでも膨大に引用されるゲームや特撮、アニメ方面に留まらず、よくできていた『シャイニング』の再現やら、主人公達のゲームを支えるジェームズ・ハリデーを巡る裏ストーリーの構図が『ソーシャル・ネットワーク』のパロディになっているところ、そして言及される『市民ケーン』と、映画について知識を持ってるほうがよいよな、という教育的な効果を持つ作品だった。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のときにも書いたが、近年は政治的状況が製作の動機となった、必然的にすっきりしない社会派映画も撮るスティーヴン・スピルバーグだが、本作は彼が本領を発揮したエンターテイメント傑作だったと思うし、あらためてスピルバーグヤヌス・カミンスキーを切るべきだと思った。特に本作は、彼の映像スタイルが合っていなかった。

上で本作について教育的な効果を持つ作品と書いたが、それは VR(ヴァーチャル・リアリティ、仮想現実)分野についてもいえるだろう。今後は『レディ・プレイヤー1』みたいなアレ、と大枠の説明がつくのだから。本作の VR 描写に斬新な未来感がないのに不満を持つ向きもあろうが、娯楽作品である本作の教育的な効果はバカにできない。

やはりスピルバーグは観客を興奮させる術を知っている。いろいろあれど、クライマックスの「俺はガンダムで行く!」には、この世代では珍しくガンダムに何の思い入れもないワタシですら血が沸き立つものがあったしね(これについて「ダイトウ、行きまーす!」のほうが良いという町山智浩さんの指摘はズレまくっていると思う。あの場面でモノマネかますってバカでしょ)。そういう瞬間を観客に提供できることこそ映画の素晴らしさだろう。

演者では、マーク・ライランス『ブリッジ・オブ・スパイ』のときからすると、年齢設定的にかなりスレスレな役をやっているのだが、さすが名優である。あと彼の元相棒をやっているのがサイモン・ペッグで、本作では彼はスーツ側の人間なのだが、ミッション:インポッシブルスター・トレックスター・ウォーズ、そして遂にはスピルバーグの映画出演って、世界一幸福なオタクだねぇ。

あと『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』でのボブ・オデンカークに続き、本作では『マスター・オブ・ゼロ』でおなじみリナ・ウェイスが起用されており、今隆盛を誇るテレビドラマ界からちゃんと人材を引っ張ってきているのはさすがである。

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