ご存知の通り、藤野可織さん(id:myopie)が「爪と目」で第149回芥川龍之介賞を受賞した。
今回は二度目の候補入りで、選考委員会が開かれる時間には強力な念を送らせてもらったのだが(川口則弘『芥川賞物語』の読書記録で書いた「知り合い」とはもちろん藤野さんのことだ)、それとは関係なく今回は本命視されており、文句なしの受賞だろう。
受賞作「爪と目」は実はまだ全部は読んでないのだが、冒頭「へっ?」と思い、ああこれが噂の二人称小説か! とどんどん引き込まれる怖い作品なのである([2013年7月19日追記]:栗原裕一郎さんによると、「爪と目」を二人称小説というのは違うとのこと)。藤野さんの小説は、超現実的な展開が最初印象的だったが、奇抜なシチュエーションに頼るだけでなく、平凡そのものに見える人物が持ってしまう怖さを描くようになっている。「爪と目」は、語り手の娘さんも主人公たる継母も不穏で不気味なのだが、その怖さを描く点において一皮向けた作品なのではないか。
藤野さんには5年前の秋に一度だけ京都でお目にかかったことがあり、その節はご迷惑をかけてしまったのだが(暴力やセクハラなど犯罪方面ではありません)、思えば2008年秋は津田大介村さ来事件を起こしたり、なぜか FM 福岡のラジオ番組にゲスト出演したり、端的に言ってワタシは頭がおかしかったのである。
それはともかく藤野さんはなかなかフリーダムな方で、藤野さんと夜の京都の街を手をつないで歩いたのは、ワタシの報われなかった人生における数少ない快事であったと言えましょう(キモい)。
そのときの思い出メモリー。
これは少しビールをこぼしてしまい謝る藤野さんをマッハの速度で止める、藤野さんとも親交の深い小説家、翻訳家の谷崎由依さんの図。
こうしてみると統合失調症患者の部屋みたいな飲み屋ですね。このときの谷崎さんの電話の相手は円城塔さんで、二人して「今から京都に来なよ」と無茶ぶりしてました。
藤野さんにはこれからますますのご健勝とご発展を心からお祈り申し上げます。しばらくは取材、取材でお忙しいでしょうが、また不可思議で怖い小説を書いていただきたいです。
それにしても今年ははてなダイアリーユーザが AKB のセンターをとったり、芥川賞をとったり、はてなダイアリーの当たり年ですね(大笑い)。
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