これの6番に入っている、A級順位戦での大野源一八段と塚田正夫九段戦の対局における王手放置の反則は、実は対局者でないある棋士の人生を大きく変えてしまったと言われる。
それは芹沢博文で、この対局で塚田正夫が反則勝ちしたため、自身のA級残留が難しくなってしまった。塚田の「ぼく、今苦しいんだ」というのは、つまり彼がA級陥落の危機にあったことを指しているのだ。
このとき芹沢は被害者意識にとらわれ、大野源一の反則負けを故意ではないかと疑い、実は皆で自分をA級から落とそうとしていると疑った。それでも最終戦で勝てばよかったのだが、そういう被害妄想にとらわれた人間に勝ち運はない。天才芹沢と言われた彼はここでA級から陥落し、二度と戻ることはなかった。
この話は長年将棋界のタブーだったと河口俊彦老師は書いているが、その上で大野源一の王手放置は故意ではなく、棋士が集中したときにやりがちなポカだと断言している。もちろんその通りだと思う。
しかし、この話は知らなかったな。
森内俊之九段が三面指しでアマ初段の中学1年生の女の子に反則負け。 5時間後も麻雀をしながらボヤいていたらしい。 ちなみにその女の子は現在渡辺明二冠の奥さんである。
王より飛車が好き―名物九段のスーパー・オモシロ・エッセー (Sankei books)
- 作者: 芹沢博文
- 出版社/メーカー: サンケイ出版
- 発売日: 1984/11
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (4件) を見る