この記事、ワタシが見落としたのでなければ WIRED.jp には日本語訳が出ていないはずである。アントニオ・ガルシア・マルティネスの「それでもフェイスブックを「解体」すべきと考える理由」があるのでこっちはもういいという判断かな。
アントニオ・ガルシア・マルティネスの文章でも冒頭に取り上げられている、Facebook の共同創業者でもあるクリス・ヒューズのフェイスブック分割をよびかける論説が New York Times に掲載され、Facebook のタコ殴り状態度合いが高まったように思う。
Facebook は、イギリスの前副首相でもあるニック・クレッグをコミュニケーション担当副社長に担ぎ出すまでして分割論に反論しているが、その根拠は以下の4つに集約される。
- Facebook を解体すると、たくさんの小企業がプライバシーよりも成長を優先して競争することになる
- Facebook を解体すると、ユーザがソーシャルメディアに投稿する不適切なコンテンツを監視する3万人を雇うお金がなくなる(もっともその当事者たちからは、安月給と精神を病む劣悪な労働環境を告発されているのだが)
- Facebook を解体すると、中国のテック企業が世界の覇権を握る(参考:WIRED.jp、TechCrunch Japan)
- Facebook による WhatsApp や Instagram といった企業の買収は、非競争的行為ではなかった。
これに対して、クリス・ヒューズも引き合いに出すなど、Facebook 解体論の根拠となる新刊を出したティム・ウーが、上記の根拠をばっさり斬っている。
以下の箇条書きはおおざっぱな意訳なので、詳しくは原文をあたってくだされ。
- 大統領選挙のときにロシアの介入を許したプライバシー侵害の常習者が、今さら偉そうなこと言う資格があるか。それに権力が集中する中央集権型のシステムは危険である。
- もっとも非中央集権的でイノベーティブだったテクノロジー分野が、競争や生態系への信頼が失われ、Facebook に買収されたくてスタートアップを立ち上げるような場所になったのは嘆かわしい。
- 70年代、80年代の日本企業の台頭は著しかったが、日本政府は企業に独占禁止法を適用しなかった(で、90年代以降は……)。一方当時のアメリカ政府は AT&T や IBM にたがをかけたが、それが次代のソフトウェア産業の隆盛につながった。
- マーク・ザッカーバーグのメールを見れば、Instagram を買収したのは競争相手として脅威を覚えたからなのは明らか。
このティム・ウーとドナルド・トランプの支持者が Facebook や Google の分割論で意見が一致してしまった話が最近あったが、2020年の大統領選挙を控え、民主共和両党とも GAFA 規制のトーンを強めているのは間違いない。そうした意味で、ティム・ウーの本は邦訳が出てほしいところなんだがねぇ。
ネタ元は Boing Boing。
The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age
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