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キング・クリムゾン最後の大阪公演を観た

(細かい異同はあるがほぼ)現在のラインナップでは、2015年12月2018年12月に続くライブとなった。

こうして書くと、きっちり3年ごとに来日公演が実現していることに気づくが、今年夏に年末の来日公演が発表されたとき、正直行くかどうかかなり迷った。なにより当時コロナ禍の第5波最盛期で、個人的にはライブに行くとか考えられない精神状態だったし、告知されている時期に状況がどうなっているかまったく読めないのもあった。

しかし、これを逃したら絶対に後悔することは分かっており、気持ちを奮い立たせて高いチケットを購入した。

今回のツアーがキング・クリムゾンとしての最後のツアーになることはトニー・レヴィンなどメンバーも明言しており、ロバート・フリップ御大も今回の来日公演が「日本での集大成となるツアー」になると書いている。キング・クリムゾンというバンドが「完結」に向かっているのは間違いない。

前回、前々回と2回続けてチケット購入をうっかり忘れ、いずれも後方の席しか取れなかったのに対し、今回は(やはり発売開始当初は躊躇した人が多かったのか)8列目という前方の席が確保できた。会場に入るとジャッコ・ジャクジクがほぼ前に来る位置で、つまりはフリップ先生側になる。それだけで気分がアガるのを感じた。

www.setlist.fm

ドラムキット3つが前列に並ぶ構成にも、もはや違和感を覚えなくなっている。今ではトーヤさんとのはじけた夫婦漫才そのユーモアセンスが知られることとなったフリップ先生による陽気なアナウンスが流れてメンバーが登場し、『アイランド』の例の SE が流れる中、軽く音出しをして演奏に入る流れももはやおなじみである。

結論から書けば、ライブ体験そのものとしては、2018年の来日公演が勝った。前回は第1部が80分、20分の休憩、そしてその後アンコール含め80分の第2部で全体で3時間だったのが、今回は第1部から代表曲がバンバン演奏されながら全体で2時間20分で、単純にやる曲数が減ったのもある。

「21世紀の精神異常者」において、メル・コリンズが呑気に「A列車で行こう」を吹いていると、フリップ先生がヒステリックなギターをかき鳴らして割り込むような音の演出も欠けていた([2022年02月16日追記]:この日の演奏音源が公開されているが、メル・コリンズは「A列車で行こう」を吹いてますね。記述が不正確でした。すいません)。逆に言うとバンドの音に余剰がなくなったというか、タイトになっていたと言える。前回より曲数は減ったとはいえ、最後の「スターレス」まで聴きたい曲は大方聴けた。それで満足である。

あと全体的にジャッコの声はよく出ていたが、彼が弾き出した「ディシプリン」のイントロが貧相でガクッとなったな。

今回はこれまでよりも圧倒的に前列で観れたのもあり、フリップ先生の姿を目に焼き付けたが、「クリムゾン・キングの宮殿」のあの音はフリップ先生が鍵盤を腕で押さえて出していたんだ、といった発見もあった(あの曲ではトニー・レヴィンも左手でベースを弾き、右手で鍵盤を押さえていた時があったような)。

これは以前も書いたことだが、思い入れのあるミュージシャンはたくさんいるが、ワタシの場合、突き詰めればルー・リードロバート・フリップの二人に行き着く(もし3人選ぶなら、ドナルド・フェイゲンが入るだろう)。ロバート・フリップは、つまりはキング・クリムゾンは、ワタシにとって特別な存在なのである。

高校2年生の夏休みに『太陽と戦慄』の CD をレンタルして聴き、人生最大のショックを受けてから30年以上の年月が流れたが、その間に6回の来日公演を観れた。特に現行のラインナップになってからは、今回を含めその歴史を総括するライブを見せてくれた。

コロナ禍がまだ世界的に続く中、真っ先に来日公演を実現してくれた(デヴィッド・シングルトンも書くように、これが少しでも遅ければ来日自体できてなかった!)キング・クリムゾンに心から感謝したいし、その「完結」の一端に立ち会えてよかった。

ありがとう、フリップ先生。

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