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今でもロバート・フリップに抱かれたい 〜 12月12日フェスティバルホールでのキング・クリムゾン大阪公演を見た

久しぶりの大阪なのだが、前回いつ来たか思い出せない……再結成ポリスのライブ以来か? ほとんど8年ぶりである。そりゃ大阪駅から米長邦雄もいなくなるはずである。

何しろワタシが最後に行ったライブは、女友達にチケットを取らされた2008年秋のアヴリル・ラヴィーン(笑)だったりするくらいで、もはや現役のロックリスナーとすら言えない気もするのだが、これはゼロ年代後半以降、福岡に来日公演がほとんど来なくなったこともある。

今回は大阪公演が週末にあるということで、キング・クリムゾン12年ぶりの来日公演に行くと決めたのだが、正直に書くと期待値を思い切り下げていた。それは以前にも書いたが、今年のはじめに出たライブ盤の内容に満足できなかったことがある。ロバート・フリップ翁もそろそろ70歳に手が届く。いつまでも彼に過大な期待をしてはいけないのではないか……と気持ちを下げていたら、チケット発売日を忘れており、文字通り最後尾な席しか残ってなかった(涙)。

ワタシも長年の音楽リスナーとして、何人も自分にとってのヒーローがいる。しかし、突き詰めて考えると、ワタシの場合、ルー・リードロバート・フリップの2人に行き着くようなのだ。ルー・リード死後、残るはフリップ先生だけなのだ。

この2人に特に共通点はないが、いずれも音楽的にも人間的にも偏りのある才人である。昔ロバート・フリップに抱かれたいと書いたことがあるが、ワタシ自身も人間的な偏りがある者として、フリップ先生の理論構築的でありながら同時にかなり出たとこ勝負で衝動的なところがどうにも好きなのである。

ライブの期待値を下げていたため日にちが近づいても割と平静だったのだが、先に東京公演を見た知人たちの評判が意外にも(?)かなり良い。

で、ワタシが観た12月12日の大阪公演だが、2015年にキング・クリムゾンのライブを見て、とても新鮮な気持ちで良いライブだった! となるとは思わなかった。本当に良い意味で期待を裏切ってくれた。

他の人も書いている通り、今回のライブは代表曲をほとんど大方やってくれる、クリムゾン史上初のベスト的選曲がなされている(80年代の曲がなかったのは少し残念)。来日公演でも各公演で曲順も選曲も微妙に異なるのだが、セットリストまとめを見る限り、12月12日が一番おいしい選曲に思うけど、これは欲目ですね。

このベスト的選曲は、端的にいってヴォーカルがエイドリアン・ブリューからジャッコ・ジャクスジクに替わったから可能になったのだろうが、ここまで来たら "Islands" もやってくれよ、とワタシなど思っていたら、「お前ら録画録音したら許さんぞ。でもな、トニーがカメラ出したらお前らも撮ってよかろう。そんじゃキング・クリムゾンのパーティを楽しみたまえ」というフリップ先生のアナウンスの後、メンバーが登場後にフリップ先生が一礼後 "Islands" のアレが流れて感動してしまった(が、これライブ盤でもそうだったね。忘れてた)。

今回はドラマーが3人おり、ステージの前列にドラムキットが3つ並ぶという前例のない構成なのだが、当たり前だがこれはギミックではなく、とにかくこの3人の太鼓が非常に見事で、ベスト的選曲でも懐メロ大会にならず、どの曲も竜巻のようなリズムによって音が立っていた。本来ならじわじわ盛り上がっていく「トーキング・ドラム」のような曲でも轟音状態になるのはちょっと笑ったが、それでいてただうるさいだけでなく、バンドの音の静と動がちゃんと演出されており、そのあたりフリップ先生の手綱さばきなんだろうか。

そういえば今回のメンバーにはメル・コリンズがいるのだが、あるバンドを脱退し、それから40年以上経って同じバンドに再加入ってギネスものだろう。その彼も、「太陽と戦慄パート1」で「あの曲」を織り交ぜたソロを吹くなど余裕を見せながら吹きまくってくれて、よくやっていた。

それにしてもこれだけシャキっとした「太陽と戦慄パート1」、「墓碑銘」、「イージー・マネー」、「レッド」、「21世紀の精神異常者」、「スターレス」、「トーキング・ドラム」、「太陽と戦慄パート2」、「クリムゾン・キングの宮殿」という不滅の楽曲を目の前で聴けるとは……キング・クリムゾンのライブはダブルトリオ時代の1995年、そして前回の2003年に観ているが、今回が一番良かった。キャリアの長いバンドの、あまり言いたくはないが、下手すると最後の来日公演になるかもしれないライブでそれを堂々と言える幸福を思うし、数年前まで引退状態だったところからクリムゾンを再始動し、このライブを実現してくれたロバート・フリップ先生に心から感謝したい。ここまできたら、このラインナップでのニューアルバムも聴きたくなった。

最後にトニー・レヴィンのカメラを合図にワタシも撮った写真を掲載しておくが、これを見れば、ワタシがどれだけ後方の席だったかお分かりいただけるだろう(笑)。自撮りする(?)フリップまで観れたぞ。

The Elements Tour Box 2015

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