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ドキュメンタリー映画『In the Court of the Crimson King』とキング・クリムゾンの最期をとらえた映像

variety.com

キング・クリムゾンドキュメンタリー映画『In the Court of the Crimson King』が今年の SXSW でプレミア上映され、映画評がいくつかあがっている。

これは元メンバーの証言からバンドの歴史を辿りながら、2018~2019年のツアーを追うもので、やはりこれはビル・リーフリンの最期をとらえた映画とも言える。ロバート・フリップは、彼が「キング・クリムゾンに加入した中で唯一の個人的な友人」だったことを明かしている。

やはりフリップの独特の流儀というか偏屈なユーモアが存分に見れるようだが、まずまず良い評価なので、早く日本での上映が決まってほしいところ。

www.theguardian.com

Guardian によるロバート・フリップのインタビュー(並びに映画評)も面白い。

彼によると、キング・クリムゾンについてのドキュメンタリー映画のオファーはこれまでにもあったようで、「何人かのとても優れた、プロの音楽ドキュメンタリーの作り手からアプローチされましたよ。ナイスで、型にはまっていて、中身を何も思い出せないようなドキュメンタリーを作る人達からね」とのことで、Toby Amies を選んだのは、彼がバンドと何の接点もなかったから。「これが私には理想的だった」とフリップ先生は語る。彼の映画に期待したのは、「キング・クリムゾンの何たるかを私に教えてくれるような」映画……ってなにげにすごいハードルである。

その期待が満たされたかは記事を読んでいただきたいが、この映画の第一の目的は「ロバート・フリップこそキング・クリムゾンであるという(フリップ考えるところの)非常識な考えを捨てさせる」ことであり、「キング・クリムゾンはアンサンブル」だと彼は強調するが、元メンバーたちの証言とは食い違うわけである(笑)。

このインタビューでも、「君は詩人に詩を散文で説明しろと言うのか?」など、フリップ節は絶好調である。

さて、これは旧聞に属するが、クリエイティブマンの公式 YouTube チャンネルにおいて、キング・クリムゾンの昨年12月8日の東京公演における "Starless" の映像が公開されている。

この映像には特別な意味がある。

このライブは昨年の来日ツアーの最終日であり、しかも "Starless" は最後に演奏された曲であり、それはつまりキング・クリムゾンの最後のライブにおける最終曲であることを意味する。

この曲の演奏後、メンバーがステージから去る中、いったんステージ袖に向かったように見えたロバート・フリップがステージ前方までやってきて、客席に向かって深々とお辞儀をした(後、自撮りをやりだした)のもファンの間で話題になったが、それが公式の映像として残されたのは意義のあることだと思う。

ワタシが観た大阪公演でもこの曲がラストだったし、円堂都司昭さんも書いているが、ワタシもこの曲を初めて聴いた高校時代を思い出し、胸が熱くなるものがあった。そして、改めてトニー・レヴィンは素晴らしいベーシストと思った。

しかし、この映像はどういう経緯で撮影されたものだろうか。しかも、その映像が公開されたのが、キング・クリムゾンの公式チャンネルではないのはなぜなのか。(今回のツアーではさほどでもなかったが)ライブ中の撮影については強迫的に禁止のメッセージを流すバンドなので、適当に撮ってみたというのはありえない。もしかしたら、この最後のライブ映像が作品化されるのかもしれない。というか、そうなってほしい。

この映像について、ロバート・フリップFacebook で以下のようにコメントしている。

RF: This, the final piece of the final performance of King Crimson's two completion tours of 2021. At 1'06" tears came to my eyes, and at 12'13 sound moved to silence.

Facebook

「1分6秒のところで私の目に涙が浮かんだ」とまで言っている。トーヤさんとの夫婦漫才シリーズをやる前までは、ロック界随一の偏屈男視されていたロバフリの目にも涙である……とか書くと怒られそうだが、本当にキング・クリムゾンは「完結」したんだなと感慨にふけってしまう。

そうそう、あとロバート・フリップと言えば、1979年は発表された彼のソロとしての代表作である『Exposure』の32枚組というとんでもないボリュームのボックスセットも発売になる。

1974年にキング・クリムゾンを解散させた後は半ば引退状態にあったのが、ピーター・ガブリエルのアルバムとツアーに参加したのを契機に、ピーガブやダリル・ホールのアルバムのプロデュース、デヴィッド・ボウイやトーキング・ヘッズとの共演ニューヨークパンク~ニュー・ウェイヴ勢との絡みなどを経て、1981年にキング・クリムゾンを再結成するにいたる1970年代末から1980年代はじめあたりまでの活動を網羅しているようだ。

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