ルー・リードの他のミュージシャン、バンドについての評を集めたツイートが取り上げられている。1973年に出版された雑誌からの転載らしい。
まず、ボブ・ディラン。
ディランにはイライラする。パーティでヤツと会ったら、黙れって言いたくなると思うよ。
続いて、キンクス。
知識人みたく、俺は腰を下ろし、キンクスを聴いて、大いに楽しむんだけど、しばらくするとうんざりしてしまって、あまり長くは聴いてられないよ。
そして、フランク・ザッパ。後述するが、これは有名である。
あいつは俺の人生で聴いた中で一番才能のないヤツだ。安物で、もったいぶってて、空疎で、何もうまくやれない。あいつは負け犬だから、ロックンロールをプレイできない。だからあいつはおかしな恰好をするんだ。それは自分に満足できてないからで、正しいと思うよ。
アリス・クーパーに対しても容赦ない。
なってこった、ホントに「あいつら」についての意見を聞きたいのか? あいつらはロックミュージックにおける最悪で、もっともむかつく存在だよ。
「あいつら」と言ってるのは、「アリス・クーパー」が当初はアリス・クーパーがフロントマンのバンドだったのを指している(マリリン・マンソンあたりをイメージしてください)。
ボロクソだが、というかそういうものばかり引用したのだが(元のバンドメンバーなどには概して好意的なことを言ってます)、これってあまり本気にすべきでないところもある。このツイートではビートルズに対して「驚くべき才能の、信じられないソングライターたち」「ビートルズが解散したのがどれだけ悲しいことかみんな分かってない」とか言ってる発言が引用されているが、一方で80年代のインタビューでビートルズはゴミだとしか思ったことがないと語っているわけで、こういうのは気分次第というか、昔のミュージシャンなんてそんなものです。
しかし、フランク・ザッパに対する憎悪は本当だったろう。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのファーストアルバムは売れなかったのは、レコード会社がフランク・ザッパ率いるマザーズ・オブ・インヴェンションのほうに宣伝費を使ったからとルー・リードが考え、フランク・ザッパを深く恨んでいた話を読んだことがある。
Boing Boing のエントリにも記述があるが、なのでフランク・ザッパのロックの殿堂入りのとき、そのプレゼンターをルーが務めたのに当時かなり驚いたものだ。そこでルーは、ザッパのことをよく知っているわけではないと最初に明言しながらも、穏当に敬意を示している。
というか、いったい誰がルーにこの役目をオファーしたんだろう。
さて、今年3月からルー・リードの大規模展覧会 Lou Reed: Caught Between the Twisted Stars が開催される。なんで今年3月からかというと、おそらく今年の3月2日が彼の生誕80年だからだろう。
ニューヨーク公共図書館で「ルー・リード・アーカイブ」が開設されたのは2019年で、それに協力したドン・フレミングは、今回の大規模展覧会でもキュレーションを担当している。これはかなり見どころの多い展覧会に違いない。
世界がこんな状況でなければ、是非ワタシも行きたいところだが、残念なり。
そうそう、今月はロバート・クワインが素晴らしいギターを聴かせるルー・リードの復活作『The Blue Mask』がリリースされて40年になるんだな。ロバート・クワインが語ったところのオリジナルミックスなどを含む、40周年記念盤とか出ないものか。
[追記]:柳下毅一郎さんに指摘いただいて気づいたが、公式サイトを見ると大規模展覧会は2022年6月9日から2023年3月4日の開催に(おそらく)変更されていた。これで観に行ける可能性が少しだけ広がったと言える。