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Netflix『アンディ・ウォーホル・ダイアリーズ』で思い出すジェリー・ホール、ジュリアン・バトラー、ルー・リードの話

www.netflix.com

Netflix で配信されている『アンディ・ウォーホル・ダイアリーズ』を牛歩の歩みで観ているのだが、このドキュメンタリーについては、人工知能で再現したアンディ・ウォーホル本人の声がナレーションを担当する倫理的な問題も話題になったりした。

普通に聞く分にはナレーションがごく自然に感じられるのだが、ウォーホル本人を知る人にとってはどうなんだろうか。

著名人を含むいろんな人がインタビューを受けているが、個人的には、元ミック・ジャガー夫人、現在はルパート・マードック(!)夫人であるジェリー・ホールにおっとなった。

なぜか? このドキュメンタリーの元である『ウォーホル日記』で、彼女はひどい書かれ方をされてたからである。

というわけで、1989年から2004年まで読者だった雑誌ロッキング・オンのバックナンバーを引用する企画「ロック問はず語り」といきたい。

yamdas.hatenablog.com

昨年、チャーリー・ワッツ追悼を書いたが、今回のソースもこのときと同じ Vanity Fair に1989年に掲載された記事の翻訳(1990年1月号掲載)である。

さて、ジェリー・ホールは『ウォーホル日記』にどう書かれていたのか。

 ただ、上流婦人ジェリーにしてみれば、先頃出版されたアンディ・ウォーホールの日記は痛手な事件だったのかもしれない。何故なら、その中でジェリーについてのあまり格好がいいとは言えないコメントが結構、話題を呼んだからだ。その中で、ウォーホールはジェリーとエレベーターに同乗した時に「ジェリーの体臭はとっても臭かった」と述べ、またジェリー直伝の男の手なずけ方というのも紹介している。それによれば、女たるものは二秒でも手が空いてる時間があるなら、自分の男に尺八仕事をすることに限るとジェリーが講釈を垂れたというのだ。

なかなかすごい話である。これに対してジェリー・ホールはどんな反応だったのか(引用中、「ビアンカ」とあるのは、元ミック・ジャガー夫人のビアンカジャガーのこと)。

同じようにこの日記に登場するビアンカに至っては怒髪天を衝いたらしく、現在訴訟まで起こしているが、ジェリーの場合は、やはり、笑っておしまいにするだけだと言う。
「私ねぇ、あまりこういうの気にならないのよねぇ……やっぱり、気にするだけ馬鹿よ。エネルギーの無駄ってもんだわ」

これを最初に読んだときは、強がって余裕な風に見せているのでは? と勘繰る気持ちもあったが、『ウォーホル日記』についてのドキュメンタリーに堂々と登場してインタビューを受けているのは、本当にジェリー・ホールという人は度量が広いのだろう。

そういえば、少し前にとても楽しく読ませてもらった川本直『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』でも、アンディ・ウォーホルゴア・ヴィダルトルーマン・カポーティとともに重要な登場人物だったりする。

小説でウォーホルが主に登場する時代と、彼が日記を書いていた時代がズレるので、『ジュリアン・バトラー』の読者も『アンディ・ウォーホル・ダイアリーズ』は必見! とは言えないのだが、クィアとしてのウォーホルを知る意味ではこのドキュメンタリーは有用だろう。

www.theguardian.com

アンディ・ウォーホル絡みではこれも取り上げておきたい。

ルー・リードジョン・ケイルが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドで袂を分かって以来、およそ20年ぶりに本格的に共作した傑作『Songs for Drella』の映像版は、マスターが長らく紛失状態にあったらしいが、無事それが発見されたのを受けて、この映像版を監督したエドワード・ラックマントッド・ヘインズ監督作品の撮影監督を多く務めている)がインタビューを答えている。

ラックマンが撮影の許諾を求めると、ルー・リードが「ステージ上にカメラがあるのを見たくないし、俺と観客の間にカメラがあるのも見たくない」と要求したため、それならどうやって撮ればいいんだよ……と困ったそうな(ステージ上の映像はリハーサル時に撮影することで事なきを得た)。

この久方ぶりの共演が実現したのも、ルー・リードジョン・ケイルがウォーホルの告別式で再会したからで、この『Songs for Drella』という作品自体、ウォーホルの人生をフィクション化したものである。また、アルバムのクライマックスである "A Dream" は、『ウォーホル日記』なしにはありえなかった。

『ウォーホル日記』におけるルー・リードジョン・ケイルについての記述に、特にルーがショックを受けたのは間違いなく、それはアルバムラストの "Hello It's Me" における「あなたの日記は墓碑銘にはふさわしくない」という歌詞にも表現されている。

この映像版も素晴らしいのだけど、ワタシ的にはやはりこの作品は一度アルバムで聴いてほしい。全編たった二人の演奏なのに、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの強力な暗黒マジックが立ち上っている。

Songs for Drella

Songs for Drella

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しかしなぁ、『アンディ・ウォーホル・ダイアリーズ』は Netflixトッド・ヘインズが手がけたヴェルヴェット・アンダーグラウンドのドキュメンタリーApple TV+、そして今回『Songs for Drella』がストリーミング配信されるのは Mubi(知らん……)とバラバラなのはなんとかならんかなぁ。

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