元々は、よくできていると小耳に挟んだ『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』を観るつもりだったが、正直これ以上ドナルド・トランプに関する映像に触れるのが苦痛になっていたためパス。次の候補だった吉田大八の『敵』は、レイトショーでやってなかったので除外。残るは『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』と本作になり、ワタシはファーストガンダムをリアルタイムに見ていたのだが、その後ガンダム関係を丸ごとほぼすべてスルーしてきた奇特な人間であり、ネタバレ問題以前というか、楽しめるか不安になったため本作を選択した。
1980年代の香港、具体的には巨大なスラム街である九龍城砦を舞台にした作品だが、九龍城砦自体が主人公とも言える映画である。映画の最後にもあるように、九龍城砦は1993年に取り壊されているが、それをセットで再現するために相当な予算を費やしたらしく、それがリアルかはワタシには分からないのだけど、スラム街のごちゃごちゃした感じやその立体性をよく描けていたと思う。
事前知識を入れずに観に行ったが、いきなり最初にあの曲がかかって、ああ、この映画の話だったかと思った次第。
九龍城砦という舞台を存分に活かしたアクションが何よりも魅力の作品なのだけど、その前に主人公にとっての居場所である九龍城砦、そこで得られた仲間たちとの絆が描かれているからこそ、戦闘シーンが燃えるわけですね。
ボス世代の中では、サモ・ハン(ワタシの世代的には、サモ・ハン・キンポーと表記したくなるが)のみがそれ相応の年齢なのだが、彼のアクションもしっかり見れるし、何より彼を見ているだけで拝みたくなるというか尊さがあったりする。一方で、年寄りに忖度せずボコボコにするハードさも良かったと思う。
宣伝文句によれば、本作は香港歴代一位の動員となったそうだが、香港の人たちにとって、30年以上前になくなった九龍城砦と80年代の風俗を描くこの映画は、単なるアクション映画というだけでなく、感じ入るものがあったのだろうか? そのあたり現地の人の声を聞きたいなと思ったりした。