本作は『ワンダとダイヤと優しい奴ら』のキャストが再結集した作品なのだが、興行的にもコケたし、評価も芳しくない。
しかし……ワタシ結構好きなんだよなぁ。笑いの師とあがめるクリーズ御大の作品だから点が甘くなるというところもあるのだろうが、実はある意味『ワンダ』より好きなところもあるくらいなんだよね。そんなに悪くない映画だと思うんだけどなぁ。
岸田裁月さんは、確か「マイケル・ペイリンが普通の脇役になっちゃった」と不満を書かれていたが、『ワンダ』にあったキャスト間の化学反応は確かに欠けているのかもしれないし、今回は動物園が舞台なため、舞台がイギリスというのがうまく出せてないところがコントラスト不足につながっているのかもしれない。
しかし、意図的に『ワンダ』と構図を逆にした設定は、前作を知る人間には楽しいし、それでいて前作そのものを引き合いに出して笑いを取るところは最後の一箇所だけという節度もハリウッド的でなく好ましい。そしてその一箇所もそうなのだが、登場人物のネーミングなど細かいところまで目配りの利いた脚本になっている。またドタバタがエスカレートしていき、最後にはクリーズがキレてしまうという後期『フォルティー・タワーズ』を思わせる計算されたスピード感を楽しめる場面もあるし、汎英国的なブラックな笑いも健在である(「飼えないならひと思いに殺してくれ」と迫る飼育係に対して、「なぶり殺しも楽しいぞ」とのたまうクリーズとか)。あと音楽も格調があって好き。
…とまあ、むきになって擁護してみたが、ラストシーンのクリーズ先生とジェミー・リー・カーティスのアップには、今回再見してちょっとキツイものがあるかもと思ったのも確かではある。