最近、Boing Boing を RSS リーダで読んでいると、"History Of Violence" という広告バナーがしつこく入っていてちょっと食傷気味なのだが、デビッド・クローネンバーグ(この表記がはてなキーワードになっている)監督の新作だったんですね。
そういえば確かカンヌに出品して好評だったけど、パルムドールは逃した奴か。公式サイトもできておる。全米公開されたばかりみたいね。
クローネンバーグ先生の映画でワタシが一番お勧めするのは、何と言っても『イグジステンズ』である。
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この映画は、デヴィッド・リンチにとっての『マルホランド・ドライブ』にあたる作品で、つまりはどこを切ってもクローネンバーグな映像世界を満喫できる円熟のクローネンバーグ印映画である。しかも、本作は単にぐちょぐちょなだけでなく、ちゃんとエンターテイメントとして成り立っている。これを指して「『ヴィデオドローム』の二番煎じでしょ?」などとしたり顔で済ませる輩は、映画というものを楽しむ資質が欠けているんだと思います。ハイ。
逆に言えば、『イグジステンズ』を観ても全然面白くなかったという人は、クローネンバーグが合わないのだと思うし、別にそれはそれで生きる上で何の支障もない。映画なんてそんなもんだ。
クローネンバーグはそのインテリ然とした外見もあるし、実際賢しらな映画を撮ることも多いのだけど、その初期作品を見れば分かるように本質は奇想と変態美の人で、何でこの人はこんな設定思いつくよと呆れる間もなく、あのどんどん映画の中に引っ張りこむ力業にこそ本領があると思う。
そうした意味でシリアスそうな『History Of Violence』はどうかなとも思うのだが、クローネンバーグの映画には絶対的な美点が一つある。それはハワード・ショアの音楽である。