- 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
- 発売日: 2013/06/21
- メディア: DVD
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デヴィッド・クローネンバーグの作品を映画館で観るのは『裸のランチ』以来20年ぶり(!)だった。
クローネンバーグというとインテリなイメージがあり、実際そうした賢しらな映画も撮っているが、ワタシは基本的にこの人は奇想と変態美の人だと思っていて、ホラー SF だろうが、ノワールだろうがサイコサスペンスだろうが、どうやったらこんなことを思いつくんだ、これ作った奴頭大丈夫か? という驚きこそがクローネンバーグなのである。そして、美しいハワード・ショアの音楽。
そうした意味で、カール・ユングとジークムント・フロイト、そしてザビーナ・シュピールラインという三人の関係に材を採った舞台劇の映画化である本作は、クローネンバーグが撮っても全然不思議でない題材だし、精緻に撮られているが、奇想に欠けている。
何しろ元が舞台劇なので、ほとんど登場人物は上に挙げた三人だけで、それを演じるマイケル・ファスベンダー、ヴィゴ・モーテンセン、キーラ・ナイトレイはいずれも良かったと思う。特に権威者として振る舞いながら攻撃を恐れ立場を気にする小心さを微妙に演じたヴィゴ。
いろいろ解釈のしようのある含みをちゃんと持たした映画であるが、ユングにしろフロイトにしろ精神科医がやってるのはまさに患者と話すことなわけで(本作の原作となる舞台劇のタイトルは「談話療法(Talking Cure)」)、患者の話をちゃんと聞くって現在の目から見れば当たり前のことやってるだけじゃんという感じなのが弱い。少なくともクローネンバーグがこれまで執着してきた、科学者や医学者がつかさどるテクノロジーが持つセクシャルさ、暴力性に欠けていると思うのだ。