私的ゴールデンウィーク恒例企画である「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする」なので説明は省略……しようと思ったが、考えてみればワタシのブログを昔から読んでいる人ばかりではないのだから、この毎年一度やってるこの企画を辿りやすいように、「洋書紹介特集」というカテゴリーを新たに作っておいた。
2011年から毎年やっているので、今回で9回目になる。『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のプロモーションもそろそろ終わりなので、つまりは本ブログは再び無期限休止状態に戻る。おそらくは来年10回目はなく、今回で最後になるのではないか。
だからというわけではないが、今回は35冊をこえるかなりのボリュームになった。洋書を紹介しても誰も買わないので、アフィリエイト収入にはまったくつながらないのだが、誰かの何かしらの参考になればと思う。
実は既に邦訳が出ている本を紹介していたり、邦訳の来るべき刊行情報をご存知の方はコメントなりで教えてください。
Virginia Eubanks『Automating Inequality: How High-tech Tools Profile, Police, and Punish the Poor』
- 電子フロンティア財団による「アルゴリズムに頼る前の5つのチェックリスト」とアルゴリズムが自動化する不平等についての本 - YAMDAS現更新履歴
- AIは未来を予測しない。いまを映す「鏡」である:伊藤穰一|WIRED.jp
アルゴリズム(昨今の一般的な用法に則れば AI と置き換えてよいだろう)が不平等を自動化し、格差社会を助長する問題をいちはやく訴えた本である。キャシー・オニールの本の邦訳は出たけど、こっちも邦訳が出てほしかったんだがな。
デヴィッド・グレーバー(David Graeber)『Bullshit Jobs: A Theory』
- 『負債論』が話題となったデヴィッド・グレーバーの新刊は、人間にあてがわれる「無意味な仕事」の勃興がテーマ - YAMDAS現更新履歴
- 書評|クソくだらなくて意味のない仕事が増えている|Bullshit Jobs by David Graeber【2018年夏休み読書週間】 - カタパルトスープレックス
- 私たちが「クソどうでもいい仕事」に忙殺されてしまう意外な理由(藤田 結子) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
本田圭佑のお気に入りの本らしい『負債論 貨幣と暴力の5000年』(asin:475310334X)も話題だからこれの邦訳も今年あたり出るに違いないが、それにしても「Bullshit Jobs」というタイトルが何よりインパクトがあって秀逸だし、クソどうでもいい仕事に忙殺される一方で、介護職など本当に意味ある仕事の賃金が低いことの矛盾を突いているように思うのよ。
[2019年5月6日追記]:本書の邦訳が岩波書店から年末刊行予定との情報を Ryutaro Nakagawa さんよりいただきました。
Shoshana Zuboff『The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power』
- ハーバードビジネススクールのショシャナ・ズボフ名誉教授の『監視資本主義』が刊行された - YAMDAS現更新履歴
- 書評|GoogleやFacebookをみる新しいレンズとしての監視資本主義|"The Age of Surveillance Capitalism" by Shoshana Zuboff - カタパルトスープレックス
これも「監視資本主義」というフレーズがあまりに秀逸で、これは邦訳が出るに違いない。主に Google と Facebook によって完成されたものが民主主義を脅かしているという問題意識が、一連の書籍に共通しているわけである。
Primavera De Filippi、Aaron Wright『Blockchain and the Law: The Rule of Code』
ブロックチェーン絡みの書籍もかなーり出ているが、法律との関係という切り口は面白いので、まだ邦訳を出す余地があると思うのである。
[2019年5月6日追記]:Satoshi Narihara さんによると、本書の邦訳が刊行予定とのことです。
ローレンス・レッシグの三冊の新刊
まずは昨年秋に出た『America, Compromised』だけど、アメリカの民主主義の危機についての本である。
続いて、今年出る2冊だが、特に『They Don't Represent Us: Reclaiming Our Democracy』のほうは邦訳出ないものかと思う。けど、難しいんだろうな。
ティム・ウー(Tim Wu)『The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age』
- ティム・ウーの新刊『大企業の呪い:新たな金ぴか時代における独占禁止法』が今秋出る - YAMDAS現更新履歴
- ブログ: ティム・ウー、Facebookを分割する時だ
- 書評|独占禁止法の歴史から現代のGAFA寡占と経済の停滞を検証する|"The Curse of Bigness" by Tim Wu - カタパルトスープレックス
2018年は、GAFA に代表されるプラットフォーム企業について、もういい加減野放しにはできないよねという合意が広がってきた年だと思うが、そこで独占禁止法に基づく分割まで踏み込んだのがティム・ウーである。今頃になって目指せ GAFA 的な周回遅れの議論をやってる日本にも、この本の邦訳は価値があると思うんだがどうだろう。
John Carreyrou『Bad Blood: Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup』
エリザベス・ホームズについては、ドキュメンタリー映画 The Inventor: Out for Blood in Silicon Valley が公開され、Hulu でドラマ化が決まり、何よりこの本を原作とし、アダム・マッケイが監督し、ジェニファー・ローレンスがエリザベス・ホームズを演じる映画化の話が出ているというのに、なんでこの本の邦訳が出ないわけ? おかしいでしょ! よほど権利料が高いとか事情でもあるのかしら。
スタンリー・キューブリック『Stanley Kubrick Photographs: Through a Different Lens』
昨年は生誕90周年記念、『2001年宇宙の旅』公開50周年記念ということで、ワタシも『2001年宇宙の旅』の IMAX 版を観たし、今年に入って『2001年宇宙の旅』本の決定版『2001:キューブリック、クラーク』が発売されたりもしたが、有名になる前に写真家だった時代のキューブリックの写真を集めたこの本も面白いと思うのよね。
Noam Cohen『The Know-It-Alls: The Rise of Silicon Valley as a Political Powerhouse and Social Wrecking Ball』
本ブログでこの本を最初に取り上げたのは2018年のはじめであり、今さらではあるのだけど、ペーパーバック版の Oculus を装着したマーク・ザッカーバーグの上に「知ったかぶり」という書名が掲げられる表紙が強烈で、シリコンバレーの政治との関わりについての本の邦訳もやはり必要だよなと思う次第である。
本書の著者は、最近では「「WikiLeaks」を生み出した男、ジュリアン・アサンジの逮捕から見えてきたこと」という記事を書いている。
Kai-Fu Lee『AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order』
- 元Google中国支社長が「中国がAIで米国に圧勝する理由」について書いた新刊が面白そうだ - YAMDAS現更新履歴
- 書評|OMOの生みの親が至るAIと愛の境地|"AI Superpowers" by Kai-Fu Lee - カタパルトスープレックス
- AIで中国は米国に勝つ。ただし本当の競争は別にある(植田かもめ)|翻訳書ときどき洋書|note
データこそデジタル情報社会における石油という話はよく言われ、これからの AI 時代、データをやりたいように集めて実装できる中国こそ AI 超大国になるという見立ては自然な流れである。Apple、マイクロソフト、Google とアメリカを代表するテック企業で要職を務めた経験がある中国人の有識者である著者の考えは、AI 超大国としての中国を考える上で必読であり、邦訳が出ないといかんでしょう。
Michael Diamond、Adam Horovitz『Beastie Boys Book』
書籍の公式サイト。ビースティ・ボーイズくらいのビッグネームになれば、既にどこかの版元が権利を購入済で、回顧録の邦訳もいずれ出るとは思うが、よろしくお願いしますよ。
Anita Sarkeesian『History vs Women: The Defiant Lives That They Don't Want You To Know』
『世界を変えた50人の女性科学者たち』(asin:442240038X)や『世界と科学を変えた52人の女性たち』(asin:4791771095)といった趣旨が近い本が昨年2冊出ているので難しいかもしれないが、昨年こうした本の邦訳が何冊も出たということ自体が重要だろう(そして、いずれも邦訳であり、日本独自の企画ではないという点も)。
Ian Haydn Smith『Selling the Movie: The Art of the Film Poster』
トランネットのオーディション課題になった本なのだから、じきに邦訳は出るに違いないが、いずれにしても「ポスターのデザイナー、スタイルの変遷、政治とイデオロギーの影響、商業がポスターの発展に果たした役割など、ポスターを通して様々な面から映画産業の歴史をひも解く」って面白そうじゃないの。
そういえば、この本の著者が編集に名を連ねる 1001 Movies You Must See Before You Die シリーズの新版(asin:1438050755)が今秋出るね。
ヨハイ・ベンクラー(Yochai Benkler)、Robert Farris、Hal Roberts『Network Propaganda: Manipulation, Disinformation, and Radicalization in American Politics』
- ヨハイ・ベンクラーの新刊はアメリカ政治におけるネットワークを利用したプロパガンダがテーマ(全文オンライン公開あり) - YAMDAS現更新履歴
- メディア崩壊:ネトウヨに支配され始めた米国|BIGLOBEニュース
ヨハイ・ベンクラーの新刊のテーマが、「アメリカ政治における情報操作、デマ、尖鋭化」という非常にトピカルなものなのが逆に意外というか新鮮だった。
共著者一同が講演し、パネルディスカッションを行う動画が公開されているので参考まで。
Mariya Yao、Adelyn Zhou、Marlene Jia『Applied Artificial Intelligence: A Handbook For Business Leaders』
書籍の公式サイト。もっとも重要な AI 研究論文トップ10を要約して紹介という試みもそうだが、書籍のほうもビジネスリーダー向けの AI 指南書というのもうまいビジネスなんでしょうな。
マーティン・フォード(Martin Ford)『Architects of Intelligence: The truth about AI from the people building it』
- 『テクノロジーが雇用の75%を奪う』や『ロボットの脅威』で知られるマーティン・フォードがAI分野の重要人物へのインタビューをまとめた本を出していた - YAMDAS現更新履歴
- 書評: AIレジェンド大盛りインタビュー集 『The Architects of Intelligence』 (マーティン・フォード) - Going Faraway
書籍の公式サイト。『テクノロジーが雇用の75%を奪う』(asin:4023313661)や『ロボットの脅威 人の仕事がなくなる日』(asin:4532198615)といった AI やロボットに関する著書のある著者だから、AI 分野の重要人物へのインタビューをまとめた本も成り立つのだろうし、これは日経あたりから今年中に邦訳が出るのを期待してしまいますな。
ダン・ライオンズ(Daniel Lyons)『Lab Rats: Why Modern Work Makes People Miserable』
著者の公式サイト。この人の前作は原書が出たときにブログで紹介しているが、思わぬ大ヒットとなり、邦訳『スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家』(asin:4062205882)も出た。
その勢いを受けて、現在のテック系スタートアップの価値観をぶった切る新刊ということで、カタパルトスープレックスの評を見る限り結構まともそうだが、著者はブライトバート・ニュースへの関与が報道されたりしていて、ちょっと大丈夫かねと思うところもある。
マリアナ・マッツカート(Mariana Mazzucato)『The Value of Everything: Making and Taking in the Global Economy』
- マリアナ・マッツカートの「資本主義再考」講義は経済学版「ファインマン物理学」なのか - YAMDAS現更新履歴
- 書評|「価値」と「生産性」の再定義|"Value of Everything" by Mariana Mazzucato - カタパルトスープレックス
- 全てのものの価値 マリアナマッツカート Value of Everything by Mariana Mazzucato | 知羊 IntelSheep
著者によるサポートページ。資本主義再考というコンセプトもそうだが、本書における「経済活動における価値の変遷」というのも今どきなテーマに思えますね。
Jimmy Song『Programming Bitcoin: Learn How to Program Bitcoin from Scratch』
書籍の公式サイト。スクラッチからビットコインをプログラムして理解するというコンセプトはうまいと思うし、あとはオライリー・ジャパンから邦訳が出るのを待ちましょう。
ロジャー・マクナミー(Roger McNamee)『Zucked: Waking Up to the Facebook Catastrophe』
- 初期のフェイスブックの投資家でもあったベンチャーキャピタリストが書く痛烈な反フェイスブック本『Zucked: Waking Up to the Facebook Catastrophe』 - YAMDAS現更新履歴
- 初期のフェイスブックを支えた投資家は、なぜ批判の急先鋒に転じたのか|WIRED.jp
Facebook 批判本の一つの決定版と言えるし、著者がその初期の投資家であるというのも示唆的である。そして、この著者は、マーク・ザッカーバーグ個人の資質を批判するのでなく、テック系大企業のビジネスモデルそのものが問題の根源であると喝破しており、これはそのビジネスモデルがアメリカのデモクラシーを蝕んでいるという認識にまでつながっている。
Susan Crawford『Fiber: The Coming Tech Revolution―and Why America Might Miss It』
スーザン・クロフォード先生の本が未だ邦訳が出ないというのも不思議な気がするが、今回もちょっと日本の読者にはピンとこない主題かもしれないのがつらいところ。でも、無縁な話じゃ実はないんだけどね。
Joseph M. Reagle Jr.『Hacking Life: Systematized Living and Its Discontents』
彼の本はいつもワタシのインスピレーションになってきたし、今回もメタライフハック本とは面白いと思うのだが、邦訳が出るかというと難しいだろうねぇ。
Mike Monteiro『Ruined by Design: How Designers Destroyed the World, and What We Can Do to Fix It』
書籍の公式サイト。「デザイン」を主題とする、とても挑発的で面白い内容を含む本になっている。こういう本の邦訳が出ると面白いと思うわけである。
Robert Hilburn『Paul Simon: The Life』
著者は音楽評論家にしてミュージシャンの伝記本を多く手掛けており、ジョニー・キャッシュの伝記本は、辛口批評で知られるかのミチコ・カクタニがその年のトップ10に入れたほどである。ポール・サイモンの決定的な伝記本と言える本書については、スティーヴン・キングが「優れた才能のあるアーティストの創造性の成長に微妙な光を投じるめったにない本」と称賛している。
すごいのは、この著者が実はポール・サイモンよりも年上なこと。80歳近くでそれだけの本を書けるなんて脱帽である。とにかく、ポール・サイモンの決定的な伝記本なんだから、邦訳が出なきゃいかんでしょう。
Eric A. Posner、E. Glen Weyl『Radical Markets: Uprooting Capitalism and Democracy for a Just Society』
本書の共著者のグレン・ワイルの名前を知ったのは、「平等を実現するラディカルな方法:WIRED ICONが選ぶ「次」の先駆者たち(9)」という記事で、「権力の集中を打ち壊し、みんなに平等なリソースと影響力を与えることについて書いてある」という本書に興味を持ったのだが、もう一人の共著者がエリック・ポズナーというのにおっとなった。
彼の苗字にピンときた人もいるだろうが、著名な法学者であるリチャード・アレン・ポズナーの息子さんですね。
意外なことに、エリック・ポズナーの本はこれまで『法と社会規範―制度と文化の経済分析』(asin:4833223317)くらいしか邦訳がないようで、彼らが書いた「資産の独占化」の打破を訴えるラディカルな本となれば、先物買い的に邦訳が出ると面白いと思うがいかがだろう。
Meredith Broussard『Artificial Unintelligence: How Computers Misunderstand the World』
著者の公式サイト。著者はデータジャーナリズムを専門とするニューヨーク大学の教授である。そうしたジャーナリズム分野における人工知能の役割について研究する著者による「いかにコンピュータは世界を誤解するか」という本は、ある種の解毒薬として求められるものだろうし、『Artificial Unintelligence』という書名自体キャッチ―だよね。
ハンナ・フライ(Hannah Fry)『Hello World: How to be Human in the Age of the Machine』
著者の公式サイト。著者はイギリス人の数学者だが、のちに『恋愛を数学する』(asin:4255009856)として書籍化される TED 講演で知る人が多いだろう。
新刊はやはりデータとアルゴリズムをテーマにしているが、「機械の時代に人間である方法」という副題は、AI 時代に合ったものではないだろうか。
Anand Giridharadas『The Elite Charade of Changing the World』
著者はインド系移民の2世で、ニューヨーク・タイムズのコラムニストを務めながら書籍を執筆しているが、前著刊行後に行った TED 講演が NHK の「スーパープレゼンテーション」で放送されたことで記憶している人もいるかもしれない。
新刊のテーマ的には、2016年に行った TED 講演の内容が近い。
これはこの変革の時代の勝者から敗者、あるいは敗者と感じている者へ向けた手紙です。そこでは痛みが怒りに変わるまで無視してきたことが告白されています。そして無関心なエリートが実体のない世界を救うために描く理想郷や未来志向をたしなめています。それは地球にいる人々を救おうとせず、火星に人々を移住させることに気を病むといったことです。
Anand Giridharadas: A letter to all who have lost in this era | TED Talk
書名にある「勝者総取り:世界を変えるエリートの言い訳」といったフレーズからも著者の立場は明らかである。
この本は、米国のいわゆる「エリート階級」が、いかに権力と富を維持強化するために制度を利用していながら、慈善活動によって「世界を変える」と人助けをしているとうそぶいてきたかを検証しています。
アナンド・ギリダラダス:大学贈収賄スキャンダルが浮き彫りにした富と権力がものを言うアメリカ | Democracy Now Japan
本書もベストセラーとなっているが、ジョセフ・E・スティグリッツやビル・ゲイツが推薦の言葉を寄せている。
さて、ここからはまだ刊行されていない本を取り上げさせてもらう。
スコット・ギャロウェイ(Scott Galloway)『The Algebra of Happiness: Notes on the Pursuit of Success, Love, and Meaning』
『The Four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(asin:4492503021)が日本でも大ヒットし、今では GAFA なる呼称をニュースサイトで見かけない日がないくらいだが、そのスコット・ギャロウェイの新刊がもうすぐ出る。
のだが、これが前作の延長線上にあるビジネス書なら間違いなく邦訳も出るはずだが、「幸福の代数学」という書名からもうかがえるし、Derek Sivers あたりが推薦の言葉を寄せていることからも分かる通り、自己啓発本の路線らしいのが難しいところ。
詳しくは書籍の公式サイトをどうぞ。
ジョン・ブロックマン(John Brockman)『The Last Unknowns: Deep, Elegant, Profound Unanswered Questions About the Universe, the Mind, the Future of Civilization, and the Meaning of Life』
著者は出版エージェントが本職であるが、プレWWW時代の梁山泊エッジ財団(Edge.org)の創始者にして多数の著作を持つ人である。彼の経歴については、21世紀ラジオ (Radio@21) の「奇跡のインタビュアー ジョン・ブロックマン」あたりを読むのがいいと思う。
『33人のサイバーエリート』(asin:4756117929)、『2000年間で最大の発明は何か』(asin:4794209363)、『キュリアス・マインド』(asin:4344014596)など邦訳されている著書も多いし、彼の最近のキュレーターとしての仕事では『知のトップランナー149人の美しいセオリー』(asin:4791768329)あたりが知られているかな。
その彼の『最後の未知:宇宙、精神、文明の未来、人生の意味についての深遠かつエレガントな未だ答えられていない問い』という書名の本を出すんだから面白そうじゃないの。ダニエル・カーネマンが序文を書いてるみたいね。
ランドール・マンロー(Randall Munroe)『How To: Absurd Scientific Advice for Common Real-World Problems』
xkcd でおなじみ……というか、日本では『ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか』(asin:4152095458)や『ホワット・イズ・ディス?:むずかしいことをシンプルに言ってみた』(asin:4152096543)の著者として知られているかもしれないランドール・マンローの新刊は、「現実世界のありふれた問題に対する不条理な科学的アドバイス」をテーマにしているようで、これも面白そうなので来年あたり邦訳出るでしょうね。
ニール・ヤング、Phil Baker『To Feel the Music: A Songwriter's Mission to Save High-Quality Audio』
ニール・ヤングが mp3 などのデジタル時代の音源の音質について強い不満を持ち、Neil Young Archives においてそのキャリアを総括しながら、高音質のサウンドを提供するために Pono というデジタル音楽サービスまで立ち上げたことは知られるが、そのあたりについてのニール・ヤングの考えが綴られたものみたい。
個人的にニール・ヤングの衰えない創作欲にも高音質へのこだわりにも敬意を払っているが、一方でニール・ヤングの客層ってそれほど音質にこだわっているかなというのが少し疑問だったので、本書の邦訳が出て、そのあたりの認識を改められればと思う。
ベン・ホロウィッツ(Ben Horowitz)『What You Do Is Who You Are: How to Create Your Business Culture』
Andreessen Horowitz の共同創業者にして、日本でも『HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』(asin:4822250857)が大絶賛されたベン・ホロウィッツの新刊は企業文化をいかに創り、維持するかをテーマにしているようで、これも邦訳出るでしょうな。
Rana Foroohar『Don't Be Evil: How Big Tech Betrayed Its Founding Principles--and All of US』
著者の公式サイト。著者は CNN の世界経済アナリストにして Financial Times のコラムニストで、彼女のコラムは日本経済新聞のサイトで読める。
その著者の新刊だが、表紙を見ただけでニヤリしてしまうだろう。もちろん書名は Google のかつての非公式社是であり、表紙の色遣いも Google を意識しているのは言うまでもない。
それで「いかにテック大企業は、その創業理念――と我々皆――を裏切ったか」という副題はいかにも皮肉だが、GAFA に代表されるプラットフォーム企業を批判する本は、今回のリストでもいくつもあるが、その創業理念から読み解くというのは面白い試みかもしれない。
マイケル・ペイリン『North Korea Journal』
久方ぶりに『スターリンの葬送狂騒曲』でコメディ俳優としての仕事をしてくれたモンティ・パイソンのマイケル・ペイリンだが、この30年は旅行番組のプレゼンター、並びにそれを基にした本の執筆が本業になっている。
昨年の南北首脳会談にあわせた北朝鮮旅行をテレビ番組「発見!北朝鮮の歩き方」にすると同時にいつものように本にもしているのだが、これが発売になる今年の秋ごろ、北朝鮮はいったいどうなってるでしょうな。
いずれにしても、マイケルが旅行番組を作ると、そこを旅行する人が多くなるという "Palin Effect" は、北朝鮮には起こらない気がするが。
さて、ゴールデンウィークも終わりである。ワタシ自身は、連休が始まる前にこれはやろう、当然できるだろと思っていたことが何一つできていないのに情けない気持ちになるが、皆さんはいかがだろうか。
それでは皆さん、ごきげんよう。さようなら。
[追記]:
以下、ここで取り上げた本の邦訳が出たのを紹介するエントリをはりつけておく。